プラ型用部品
- 金型部品が組み合わせて使用される場合、部品どうしのはめあい関係が生じます。 はめあいは、部品どうしの求められる機能によって、「すきまばめ」、「中間ばめ」、「しまりばめ」の3種類に分類されます。さらに詳しくは、JIS規定で規定されているクリアランスの組み合わせによって、所望のはめあいを決めます。 はめあいのクリアランスは、実際には樹脂の種類や金型構造などによって、ノウハウとして各企業で設計指針を決めている場合が多いのですが、一般的な目安としては以下のような推奨値も示されています。 すきまばめタグ:
- 樹脂成形金型は、量産成形加工を重ねていく途上で、樹脂から発生するガス成分ややに、大気中の水分等が、金型部品の表面や入れ子分割のすき間に堆積して、成形不良を引き起こす原因となります。 したがって、金型は定期的に分解清掃クリーニングを行う必要があります。 金型の分解清掃クリーニングは、一般に下記の手順で行います。 金型の分解 ↓ 金型部品の洗浄、錆び落とし等 ↓ 金型の組み立て ↓ 金型の作動確認 メンテナンスを行いやすくするためには、金型の設計の段階で工夫を盛り込んでおくことが賢明です。以下にそれらのアイデアを示します。
- プラスチック成形金型に用いられている、主要な鋼材の国際規格間の早見表を紹介します。 (厳密には機械特性や熱特性等が完全に一致している訳ではありませんので、ほぼ同程度の鋼種であるとご理解願います)タグ:
- はめあいとは、2つの部品どうしを組み合わせる場合のクリアランス(すき間)の管理方法です。プラスチック射出成形金型を組み立てる場合にはたくさんの部品が組み合わされますので、言わば「はめあい」が多数存在しているということになります。 はめあいは、部品間の適切なクリアランス量を確保することにより、部品の移動や固定がそれぞれ所望の状態になるように、科学的な裏付けによって部品設計を行うための指針となります。日本ではJIS B0401等で規定されています。 はめあいには、基本的に以下の3つの方法があります。 (1)すきまばめ 2つの部品の寸法公差がどのような状態であっても、かならずクリアランスを確保できるはめあいです。 エジェクタピン外形寸法とコア穴 コアピン外形寸法とコアピン穴 スライドコア外形寸法とガイドレール幅寸法など。 (2)中間ばめ 2つの部品の寸法公差の組み合わせによっては、クリアランスがある場合と無い場合があるはめあいです。タグ:
- プラスチック射出成形金型のキャビティやコアの機械加工では、放電加工法が多用されています。放電加工法は、焼き入れ後のマルテンサイト化した硬い鋼材にも平易に形状加工ができる、優れた機械加工法です。精密な形状や3次元曲面の加工にも適しています。 しかし、放電加工の特有の機械加工特性をよく理解をしておかないと、金型部品として使用する際に不測の不具合を生じてしまう場合が稀にあります。そこで、放電加工のプロセスを基本に立ち戻って理解をしてみましょう。 放電加工では、通常、電極を製作し、これを被加工物(ワーク)に対峙させ、双方に異なる電位を加えた後、加工油の中で電極を徐々に近づけていって、アーク放電が生ずる際の高温発熱による熱エネルギーで、ワークの一部を溶かして吹き飛ばしながら加工を進行させます。 電極とワークの放電するすきまのことを、放電クリアランス、放電ギャップと呼んでいます。放電クリアランスは一般的に0.03〜0.3ミリ程度です。加える電流の大きさによって調整をします。加える電流は、直流で、+極と−極があります。一般的には電極側を+極(陽極)とし、ワーク側を−極(陰極)として設定します。この方式の方が、加工性、電極の消耗度合いなどが合理的なためです。タグ:
- 先回に引き続いての、金型の強度計算でよく使用される専門用語の解説です。意味を正しく理解しておきましょう。 ■縦弾性係数(たてだんせいけいすう) 材料の比例限度内(フックの法則が成立する範囲内)で、引張応力または圧縮応力とこれに相当する引張ひずみ、または圧縮ひずみの比を、この材料の縦弾性係数と言います。 または、初めてこのデータを測定したThomas Young氏の姓から、Young率(ヤング率)とも呼ばれています。 縦弾性係数は、材料によって一定の数値を示します。 通例として、縦弾性係数は、「E」で表記される場合が多いです。 Eは弾性(Elasticity)の頭文字から来ています。 ■引張強さ 引張試験を行った場合、荷重−ひずみ線図の最高荷重に相当する引張応力のことを引張強さと言います。 ■許容応力 金型や機械を設計する場合に用いられる最大応力のことを許容応力と言います。 許容応力は弾性限度以下に設定しなければなりません。タグ:
- 前回に引き続き、金型の強度計算でよく使用される専門用語をピックアップしてみましたので、意味を正しく理解しておきましょう。 ■引張応力(ひっぱりおうりょく) 横断面積Aを有する平等真直棒が引張荷重Pを受けて、平衡状態にある場合、この棒を1仮想横断面で(1)と(2)の2つの部分に分けたと考えるとき、(1)は(2)から力Pで引っ張られて平衡を保ち、逆に(2)は(1)から同じ力Pを受けて平衡状態に置かれます。 この場合には力は仮想横断面上に一様の強さで分布するので、引張応力はP/Aと定義されます。 ■圧縮応力(あっしゅくおうりょく) 横断面積Aを有する平等真直棒が圧縮荷重Pを受けて平衡状態にある場合、この棒を1仮想横断面で(1)と(2)の2つの部分に分けたと考えるとき、(1)は(2)から力Pで圧縮されて平衡を保ち、逆に(2)は(1)から同じ力Pを受けて平衡状態に置かれます。 この場合には力は仮想横断面上に一様の強さで分布するので、圧縮応力はP/Aと定義されます。タグ:
- 射出成形金型の強度計算では材料力学を活用します。材料力学では様々な専門用語が登場しますが、用語の正確な意味を理解しておかないと、計算結果や計算過程での間違いを見過ごしてしまう場合があります。 今日の材料力学の計算は、エクセル等のソフトウエアを用いて計算ができますので、手計算の時代と比較すれば計算時間自体は大幅にスピードアップされました。しかし、計算過程を確認したり、入力するデータの意味を正確に理解をしておかないと、誤った定義のデータを入力してしまう危険が潜んでいます。 そこで、特によく使用される専門用語をピックアップしてみましたので、意味を正しく理解しておきましょう。 ■等質 物体の各小部分の性質が全て等しいこと。金属材料は一般に等質であると考えられますが、プラスチック成形品や天然素材では等質であるとは限りません。 ■等方 機械強度、熱伝導率、電気的性質等のある性質が材料の方向によって異ならない物体は、その性質に関して等方(isotropic)であると言います。 ■異方 ある性質が、方向によって異なる物体はその性質に関して異方であると言います。タグ:
- プラスチック射出成形金型では、高温のプラスチックから熱を受けたり、温度調節器やカートリッジヒーターから熱を受けますから、金型部品は熱によって膨張することになります。熱膨張によって金型部品の位置寸法や摺り合わせ位置は微妙に狂ってしまい、極端な場合には、かじりや破損を起こす原因となってしまいます。 金型部品の熱膨張量は、素材によって異なります。金型に使用される一般的な金属材料の熱膨張のしやすさを比較すると、以下のような序列になっていることが分かります。タグ:
- 金型を温度維持するためには、冷却水(温水)やカートリッジヒータで、熱エネルギーを型板やキャビティヘ供給しなければなりません。金型へ熱を供給するためには、必要な熱エネルギーの容量を計算しておく必要があります。”経験と勘“で金型を温度調節することで対応が可能な場合もありますが、新しい金型を新規に設計する場合には、技術計算である程度必要な熱容量を予測しておく姿勢は大切です。これから新しいプラスチックの射出成形金型を開発するためには、今までの経験のみでは対応が図れなくなる場面が増えてくることが予測されます。 今回は、ケーススタディで金型の温度調節に必要な熱容量を計算する練習をします。 問題 プラスチック射出成形金型があり、2プレート構造のコールドランナー金型構造を採用している。この場合、以下の設例に基づいて、金型の温度調節に必要な熱容量を求めよ。タグ:
- プラスチック射出成形用金型は、樹脂から発生する揮発性・腐食性の化学成分や、空気中の水分がキャビティの表面に付着して酸化鉄(錆び)を招く可能性が高いです。キャビティの表面に錆びが発生してしまうと、それを除去するために磨いたり酸で拭いたりすると、その部分が凹んだり傷ついたりして、成形品の表面に転写されて、外観品質を損なうことになる危険性が極めて高くなります。 キャビティ表面を腐食するガス類としては、フッ素、ハロゲン系ガス、塩素ガス(塩化ビニル樹脂等から発生する)、難燃財から発生するガス、ガラス繊維表面から発生するガス等が挙げられます。 そこで、キャビティの錆びを防ぐためには、めっきや皮膜(コーティング)を施す等の手段が用いられますが、そもそもの鋼材自身の耐食性を改善するという手段も有力です。タグ:
- 成形品の表面に意図的に凹凸模様を施す処理を梨地処理(シボ加工、エッチングとも呼びます)と呼んでいますが、梨地処理は、キャビティの表面をある種の酸と接触させて、化学反応によって凹凸を形成させる処理になります。 梨地処理をすることにより、成形品の表面には凹凸模様が転写され、その結果、光沢感が変化して高級感のある外観を得ることができます。また、ウエルドラインが目立たなくなるという効果もあります。 しかしながら、梨地の凹凸深さが深すぎる場合には、キャビティから離型する際に、その凹凸によって成形品の側面にスクラッチ(ひっかき傷)やかじりを生ずる場合があり、なかなか成形条件では改善を図ることができない場合があります。 梨地凹凸の深さと抜き勾配との間には、目安として「最大高さ8μmの場合、1°以上」という指針があるようです。しかし、この指針は、成形材料の種類や成形品のサイズ、ゲートの位置等によって常に有効であるとは言い切れません。 梨地処理を成形品の側面に施す場合には、次に掲げる対策を金型設計の時点で講じておくことが重要になります。 (1)抜き勾配 抜き勾配は、可能な限り大きく設定をするようにします。3°とか5°とか、可能であれば10°以上であっても構いません。タグ:
- アルミニウム合金は、アルミニウムを主要な素材とし、亜鉛、銅、珪素等の元素とによって組成されている軽合金です。プラスチック射出成形金型では、簡易金型、ハイサイクル成形金型、ブロー成形用金型、真空成形用金型、鋳造模型などに利用されています。 アルミニウムは、軽量で熱伝導性が良好、被削性も優れるという特徴を持っていますが、硬さが低いために、打痕やスクラッチ(ひっかき傷)によって、表面が凹凸になってしまいやすい欠点があります。 そこで、このような表面硬度の低いことを改善するために、数種類の表面処理が確率されています。アルミニウム合金の主要な表面硬化の方法は、次のような種類があります。 ○硬質アルマイト 陽極酸化法という処理で、酸化アルミニウムを強制的に表面に形成させて、硬さと耐磨耗性を改良する方法です。プラスチック射出成形金型の表面処理では、最もポピュラーな方法です。皮膜の厚みは30μmと厚くすることができます。 ○硫酸アルマイト 硬質アルマイト処理よりは硬度が低下し、皮膜の厚みも8μm程度と薄いのが特徴です。タグ:
- 金型の温度をコントロールするためには、100℃以下の場合には、冷媒として水を使用することが一般的です。冷却水は、温度調節器の循環ポンプによって温度を制御された水が、金型内に備えられた冷却水穴の中を循環しながら、金型の温度を熱伝達や輻射によって温度を安定化させます。 冷却水の循環の様子は、通常は金型の外部からは見ることができません(金型が透明であったならば見ることはできますが・・・)。実際には冷却水の流れ方は流体力学的には、「層流」と「乱流」という2通りのパターンが存在します。 金型の温度制御を効率的に行うためには、冷却水の状態は「乱流」であることが望ましい状態です。 「乱流」となる状態は、流体の動粘性係数、穴の直径、流速によって決まる「レイノルズ数」という指標によって概略想定が可能になります。 水に限定して考えるならば、冷却水を乱流にするためには、ある流速以上の速さで水を流してやることで実現ができます。 つまり、金型の冷却水穴の直径が決まれば、乱流にするためには循環ポンプから供給される流量を、一定以上の値で供給すればよいということになります。 この場合、水温によって動粘性係数が異なってきますので、水温によっても流量を変化させる必要があります。タグ:
- プラスチック歯車は、回転軸の伝達や制御に用いられる精密機構部品です。歯車の性能が悪いと回転が滑らかにならなかったり、騒音が発生したり、振動が起きたりします。 プラスチック成形品ですので、当然収縮や変形が生じる可能性がありますが、様々な不具合要因を最小化するために、金型の構造も設計時点で検討をする必要があります。 以下に、設計上のポイントを紹介します。 ポイント1:キャビティ−コアの位置決め キャビティ−コアの位置決めは、それぞれを円筒形のテーパー印籠合わせとし、キャビティ−コアの中心どうしをできるだけ正確に合致させるようにします。 ポイント2:ゲート位置 ゲートは、ピンポイントゲートとし、センターに近い場所に配置するように留意します。 ポイント3:ゲート本数 3本、5本、7本など奇数の配置をすることで同軸度を向上させるように工夫します。 ポイント4:突き出し方法 エジェクタピンで突き出す場合には均等に、突き出しができるようなピッチにエジェクタピンを配置する必要があります。 また、軸受け部はエジェクタスリーブを採用することが推奨されます。タグ:
- 射出成形加工では、溶けたプラスチック材料が、ランナー(流路)の中を流動してゲートを通過してキャビティまで到達します。この一連の流動の過程において、圧力は徐々に損失されていきます。 溶けたプラスチックは粘性流体という流体に属し、ある粘度を持った流体です。しかも粘度はプラスチックの温度によって変動し、樹脂温度がある一定の範囲よりも低下してしまうと流動できずに固化が始まってしまうという独特の特徴を有しています。 さて、粘性流体が流路を流れる場合には必ず圧力損失が発生します。これは水や油の流動でも同様です。では、どのような場合に圧力損失が大きく発生するのでしょうか。圧力損失が発生しやすい条件は以下のような場所であることが知られています。 1. 流路の入り口付近 流体が流入する入り口付近では渦が発生し、損失が発生します。 入り口コーナー部のRの大きさによって損失を低減させることができます。 2. 流路が曲がる場所 流路が角度で曲がる部分では、流体が収縮した後に膨張したりする変化が発生するので、これが原因となって圧力損失が発生します。タグ: