プラ型用部品
- 成形品にアンダーカット部分がある場合には、スライドコアや斜め突き出し、強制突き出し等の機構を利用して、金型から成形品を取り外すことが行われています。 しかし、複雑なアンダーカット形状の場合には、メカ構造で対処することが非常に困難である場合もあります。 このような場合には、「置き駒構造」と呼ばれている古典的な手法で処理することができる場合があります。 「置き駒構造」は、アンダーカット部分をコア分割し、成形品の突き出しと一緒に分割コア(置き駒)も取り出し、その後、手動で置き駒を外します。 次の成形の際には、置き駒を金型内に再び取り付けます。 したがって、置き駒構造の場合には、半自動の成形加工になるという欠点があります。 ただし、所望のアンダーカット形状を一体成形品に設けることができますから、そのような特殊な構造がどうしても必要な場合には有効な手段になります。 要約しますと、置き駒構造がその威力を発揮できる成形品は、次のような場合です。タグ:
- プラスチック射出成形金型は、量産の成形加工を行っておりますと、ある確率で初期故障や偶発故障に遭遇する可能性があります。 前回の講座では、故障期について解説しましたが、今回は、平均故障間隔(MTBF)について説明します。 MTBFとは、Mean Time Between Failures の略称です。金型が故障してから次の故障が発生するまでの平均時間がMTBFとなります。したがいましてMTBFの単位は、時間(hr、min等)若しくはショット数が使用されます。 MTBFの数値が大きな場合には、その金型は故障が発生しにくい金型であるという評価をすることができます。 逆に、MTBFの数値が小さな場合には、その金型は故障しやすく、安定した成形加工の生産計画が立てにくい金型であると評価されます。 もう少し現実的な事例でMTBFを考えてみましょう。同じ設計図面を使用して、複数のリピート金型を製作する場合、1型目の金型は、初期故障や偶発故障が頻発しやすいのですが、それらに対して技術的な改善を加え、2型目以降はそのような故障は発生しにくくなります。したがって、2型目以降の金型のMTBFは1型目の金型よりも大きな数値となっています。タグ:
- DLCコーティングとは、ダイヤモンド・ライク・カーボン(Diamond Like Carbon)という、最近実用化がはじまった金属硬質皮膜のことです。 DLC皮膜の成分は、非晶質カーボンで、非常に硬く、耐摩耗性に優れています。 皮膜硬さは、HV3000〜4000で、窒化チタン(TiN HV1500〜2000)、超硬合金(HV1500〜2000)、硬質クロムめっき(HV900から1200)、工具鋼(HV500から1000)と比較しても、相当な硬さであることが分かります。 耐磨耗性も良好で、摩擦係数も大変小さな値を示します。 対薬品性も良好です。 コーティング皮膜の表面は、平滑であるために離型性も改善されます。 コーティングプロセスは、専用の炉の中に被加工物を取り付け、CH系ガス雰囲気中でプラズマ状態でコーティングします。 出来上がった皮膜の表面は黒色で光沢があります。 金型の摺動面や磨耗しやすい部分への新しいコーティング皮膜として将来性が検討されはじめています。 具体的には、タグ:
- トンネルゲート(サブマリンゲート)は、パーティング面の開閉時に成形品とゲートを自動切断する構造のゲート方式として多用されています。 トンネルゲートの基本設計では、形状や寸法などのノウハウが必要になりますが、今回は、成形品とゲートとランナーの関係について基本的なバラエティを紹介します。 【図】には、一般に採用されているトンネルゲートの基本パターンを示しています。 パーティング面を挟んで、固定側と可動側に大きく大別しますと、ゲートとランナーの組み合わせは、4通りのパターンがあります。タグ:
- ランナーロックピン−ストレート・スタンダード(導入部付)タイプーは、ピンポイントゲート構造金型のランナーロックピンのバリエーションとして開発された商品です。 ピンポイントゲートは、一般に、3プレート構造金型を使用しますが、ゲートランナーを固定側から抜くためにランナーロックピンを使用します。 ランナーロックピンの先端部にはアンダーカット形状が設定されていて、ゲートランナーを強制的に抜く役割を果たします。 ゲートランナーを抜き終えた後は、ランナープレートの前進によって、こんどはランナーロック部が強制的に抜かれて、ランナー全体として金型内部から取り出され排出されます。 この際に、硬い樹脂(ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等)やガラス繊維入り樹脂を使用する場合には、ランナーロック部が割れて、金型の内部に残ってしまう場合があります。そうなってしまうと、次のショットではランナーロックの機能が損なわれてしまい、連続成形加工が出来なくなってしまいます。タグ:
- スプリングガイド付きプッシャーピンは、固定側(キャビティ側)に成形品が離型不良で残ってしまいやすい成形品のアシストをするために開発された部品です。 成形品の形状の関係で、固定側に肉盗み(肉逃げ)を設けなければならない場合等では、金型のパーティング面が型開きする際に、成形品がそれらに抱きついてしまい、固定側に残ってしまう不具合が発生する場合があります。このような現象を離型不良と呼んでいます。 離型不良を回避するためにはいくつかの技術的手段が考えられますが、今回開発されたスプリングガイド付きプッシャーピンは、そのような状況を改善するためにお使い頂く部品です。 構造はいたってシンプルな内容です。段付きのプッシャーピンの根元に丸線コイルスプリングを組み込むだけです。 プッシャーピンの配置する位置は、可動側の成形品形状とマッチングさせて、パーティング面でピンが押し戻される位置に配置してください。 丸線コイルスプリングの強さを選択することによって、離型の促進を調整することができます。 また、特殊な事例では、成形品の可動側にエジェクタピンの跡をのこしたくない場合には、固定側よりの突き出しピンとして使用することも可能です。タグ:
- 刻印付きストレートコアピン−凸文字タイプ−は、成形品の表面に凹文字を転写させるために開発された商品です。 従来の刻印付きストレートコアピンを使用した場合には、所望する文字が成形品の表面から凸の状態で文字転写がなされていました。 成形品の表面から文字が凸となっておりますため、文字部分が他の成形品と勘合する部分や機能上凸形状が許可されない部分へは、刻印文字を配置することができませんでした。 凸文字タイプ刻印付は、コアピンの天面に凸文字を形成しておりますので、成形品の表面には凹文字が転写されます。したがいまして、従来不都合が生じていた成形品の部分にも刻印文字を配置することが可能になります。 コアピンの直径は、φ1~4までのラインナップがなされております。 凸文字の高さは0.05mmで、文字幅は最狭部幅で0.03~0.1mmとなっています。 コアピンの材質は、SKH51を使用し、硬度は58~60HRCです。 文字タイプは、現在のところ、アルファベットと数字のみとなっています。タグ:
- 小型電子部品や精密機械部品などの射出成形加工では、1個取り、2個取り、最大でも4個取り程度で小型モールドベースの金型を使用し、射出成形機の最大型締力も15〜5トンクラスを使用する事例が急速に増えてきています。 成形品が微小化していますので、溶融樹脂の流路であるランナーやスプルーもそれに伴って細くすることが必要です。 過剰な太さのランナーやスプルーは、成形材料を浪費しスクラップを増大させるばかりではなく、成形サイクルの要である冷却時間をいたずらに長くする弊害をもたらします。 このような時代の要請にお応えするために、ミスミでは小型タイプのスプルーブシュを商品化しました。 実際に小型精密部品を射出成形されているお客様からの、数々のヒアリングを基に規格を集約した商品です。 固定側型板へのボルト取り付け穴の周囲には、応力集中を緩和するための補強Rを施してあり、高い射出圧力が瞬時に作用しても、強度を維持できるような工夫がなされています。 スプルー部の内面の面粗度も良好に仕上げてありますので、離型不良の発生も防止できるよう丁寧に仕上げてあります。 コネクター、スイッチ部品、マイクロレンズ、歯車、小型インサート成形品等の金型の使用を想定しています。タグ:
- 金型デートマークセットは、プラスチック射出成形品の表面に、製造年月日や樹脂の種類を転写するための部品です。 家電用品リサイクル法の施行や、プラスチック製品の分別回収などの対応を行う上では、重要な意義がある部品です。 ところで、従来の金型デートマークセットは、金型のキャビティまたはコアの上面から、デートマークセットを、あらかじめしまりばめに加工しておいた取り付け穴に叩き込む方法で、固定を行っておりました。 そのために金型のメンテナンスの際にデートマークセットを分解清掃する際の作業性や、穴の縁を痛めやすいということが改善事項として検討されていました。 ご紹介するツバ固定式タイプの金型デートマークセットは、コアピンと同様の感覚で、すきまばめに仕上げられた取り付け穴にキャビティ、コアの裏面から挿入し、ツバ部で固定する構造となっています。 さらに、デートマークの全長指定を、0.02mmの寸法精度で実現することができるような構造となっておりますから、発注記号で指定をするだけで、高寸法精度のデートマークセットをご購入できるようになりました。タグ:
- プラスチック射出成形金型に使用される鋼材は、主に30〜40種類ぐらいあり、適宜選択して使用されています。 樹脂が特殊な場合や金型部品特性が独特のノウハウを必要とする場合は、鋼材も特殊なものを使用します。 以下に、いくつかの参考事例を紹介します。 高耐磨耗・高靭性金型向け マトリックスハイス 0.5/0.6C-3/5Cr-2/5Mo-1/3V SKH51の炭素量を低減させ合金元素を調整した特殊鋼です。 コネクタ金型、電子部品金型に利用されています。 超鏡面・高耐磨耗・耐食金型向け SUS420J2系+N系 SUS420J2にC、Cr、Nを添加。特殊溶解法P-ESR法により精錬される。 光ディスク金型、医療用具金型に利用されています。 超耐磨耗金型向け 高C高合金粉末工具鋼SKH40(粉末) 1.27C-4.3Cr-5Mo-6W-8Co粉末ハイス鋼 耐摩耗性は大変良好で、鏡面加工性も良い。 しぼ加工性も良好。 ガラス繊維入り樹脂金型やICモールドに使用されています。タグ:
- プラスチック射出成形金型は、成形加工を行った後で、分解清掃などのメンテナンス(保守点検作業)が必要です。 成形材料から発生する「やに」成分やガスが凝集したデポジットなどが、キャビティやコアの表面や分割面に蓄積します。 これらの成分は、金型の温度がまだ温かいうちは液状ですが、一度温度が低下しますと固化してしまい、そこから空気中の水分が付着して錆びや腐食が進行したりもします。 このような状態に陥りますと、成形品の表面品質や寸法精度が変動し、またエアーの逃げが不十分となりショートショットが起きる場合もあります。 メンテナンスの頻度は、成形品の品質管理状況や金型の大きさによってまちまちです。 短い周期の金型では数日に1回、長い周期の金型でも2か月に1回程度はメンテナンスが必要です。 メンテナンスの一般的な方法は、金型を分解し、それぞれのパーツを超音波洗浄したり有機溶剤で洗浄し、錆びている部分を磨いたりめっきしたりします。 磨耗が激しい部分は、入れ子修正したり、部品交換を行います。タグ:
- 日本で設計製作された金型を、他の国や地域へ輸出して使用する場合には、いくつか考慮しておかねばならない事項があります。 日本で設計製作される金型のほとんどは、日本の工業標準規格(JIS)や日本製のデファクトスタンダード標準部品(事実上の業界標準部品)が使用されています。 外国ではこれらの標準規格がそのまま応用できるとは限りません。JIS規格とISO規格がかならずしも整合性が取れているとは言い切れません。 特に、アメリカ合衆国は、長さの単位がメートル系ではなくインチ系を採用している場合が圧倒的に多いので、ねじ規格や工具規格などでは特に注意が必要です。 現地で金型の補修やメンテナンスを考慮する際には、どちらの規格を優先すべきかを慎重に検討する必要があります。 また、電力事情が各国で異なりますので、射出成形機の電圧変動によっても成形条件が微妙に変化することもあります。 冷却水の水質もそれぞれの国で事情がまちまちです。水質によって硬水と軟水がありますので、金型の冷却孔の内部に付着するスケールの状況も異なってきます。スケールが付着しやすい国では、冷却孔のメンテナンスやスケール付着防止剤などを考慮します。タグ:
- プラスチック射出成形金型のキャビティの耐食性は、鋼材によって左右されます。 成形材料から発生する腐食成分や空気中の水分によって鋼材の表面は酸化が促進され、腐食が進行します。 耐食性の評価は具体的な指標を得るのが難しいのですが、参考となる実験値が紹介されておりますので、これを目安とすることができます。 【表1】プラスチック射出成形金型キャビティ用鋼材の耐食性評価データ例(◎5%硫酸中での腐食進行テスト)タグ:
- プラスチック射出成形金型のキャビティ表面は、ミーリング加工や放電加工、ワイヤーカット加工によって機械加工が行われた後で、主として手仕上げによる磨き加工、あるいは機械による磨き加工が施され、表面は滑らかに磨き上げられます。 磨きの状態が適切でないと、成形品の転写表面の光沢が鈍くなり、面の品位が劣ることになります。 また、成形品がキャビティから離型する際に、面の凹凸がアンダーカットとなり、離型不良を引き起こす原因となる場合があります。 キャビティ表面の磨きは、硬い砥石や砥粒によって行われます。砥石や砥粒は、目の粗い(粒が大きい)順番から細かい方へ順番に使い分けをします。磨きに研削油を付けながら目詰まりやかじりを起こさないようにしながら作業を進めます。 磨く方向は、一定方向のみではなく上下左右や円周方向に変化させるようにして、磨き面が均一になるように配慮します。 研磨材としては、下記の材質が主に使用されています。タグ:
- ホットランナーは、金型の中に電気的に加熱されたランナー部を内蔵することにより、スクラップとなるランナー部を全く発生せずに射出成形ができる特徴があります。 ホットランナーは、大量生産されるプラスチック射出成形品にとってはスクラップの極小化を図ることができるため、材料コストの低減、スクラップ処理コストの低減を飛躍的に達成することができる技術です。 さらに、コールドランナーで発生する充填圧力損出が小さくなるため、充填圧力も低く抑えることができます。また、冷却サイクルも短縮を図ることができます。 国内でも食品容器、医療用具、自動車部品等で多数の使用実績があります。 ホットランナーシステムは、機構部分がマニホールド部分とノズル部分に大きく大別されます。さらに、ホットランナー部の温度制御を行うコントローラーが必要になります。タグ:
- モールドデポジットとは、プラスチック射出成形金型の入れ子の隙間やキャビティの隅に付着する堆積物のことです。 デポジットが堆積しますと、成形品にショートショットが発生したり成形品の形状が正確に転写されなくなる不具合が発生します。 デポジットが発生する原因は、樹脂の中に含まれている化学成分が堆積したり、金型の表面に施した薬剤や油分が影響している場合が考えられます。 空気中の水分が入れ子の隙間に付着して微細箇所に錆のきっかけが発生し、そこにデポジットが堆積を始め、堆積が進行したりします。 樹脂から発生する「やに成分」や揮発性のガス成分は、金型が成形加工のために金型温度が高い場合には、堆積しにくいのですが、金型を成形機から降ろして金型温度が下がった場合には、ガス成分等が固化し、デポジットになったりもします。 デポジットは、金型の分解清掃によって定期的に除去をすれば、金型は長持ちします。金型を設計する際には、どのぐらいの頻度で金型の分解清掃を行うのが最適かを考慮しておくことが大切です。タグ:
- プラスチック射出成形金型を成形加工で使用しておりますと、スライドコアやエジェクタピン、エジェクタスリーブとセンターピンなどが「かじり」を生ずることがあります。 「かじり」は、摺動面の異常磨耗のことで、異常磨耗には発生原因によって、以下のような分類がなされています。 ■1. アブレシブ磨耗 摺動する金型部品の材質に硬度の差がある場合に生じやすい異常磨耗形態です。 硬い材料が柔らかい材料に食い込んでひっかき(スクラッチ)を起こし、焼きつく現象です。 ■2. 凝着磨耗 金型部品の凸部分がぶつかり合って最も接触が激しい箇所が凝着を起こし、凝着部分が脱落して磨耗粉になり、磨耗が進行する形態です。 ■3. 疲労磨耗 金型部品が動いたり停止したりを繰り返すことによって疲労が発生し、磨耗する形態です。 うろこ状の剥離(フレーキング)を生じている場合の形態です。 ■4. 微動磨耗 比較的クリアランスの小さなはめあい状態においてピッチング状の磨耗を生ずる磨耗形態です。 スクエアキーとキー溝に生ずることが多いです。タグ:
- 食品容器にはプラスチックが多数使用されています。PETボトルや食品のカップ、包装は大半がプラスチックとなっています。 食品容器は、人間が安心して食することができるように、衛生的であって、ばりによって唇や舌、指等を傷つけることがないように品質管理がされている必要があります。 また、孔があいていたり、クラックが生じているとそこから細菌が浸入して食品を腐らせてしまいますから、そのような品質不良も許されません。 代表的な食品容器には、下記のようなものがあります。 マーガリン容器:PP アイスクリーム容器:HIPS、HDPE 乳酸菌飲料:HIPS プリン容器:PS、PP お菓子容器:HIPS、PP、HDPE 清涼飲料水ボトル:PET 食品の用途によって、耐熱性(暖めて食するもの用)、耐低温性(冷凍、冷蔵して食するもの用)、ガスバリアー性(酸素に触れないようにして保存したい食品用)を必要とします。タグ: