プラ型用部品
- 金型や機械装置の部品は、荷重を受けながら使用されます。荷重は、一定した強さの静加重が作用する場合と、荷重が変動する変動荷重が作用する場合があります。一般的には、変動荷重が作用するケースが多いです。さらに、荷重が繰り返して作用することの累積によって機械部品は、疲労という現象が発生し、本来の静荷重による破壊応力よりも遥かに小さな応力で破壊してしまうことが知られています。 このような、繰り返し荷重の累積による破壊を疲労破壊と呼んでいます。一般的には大半の金型部品や機械部品は、繰り返し応力が107回(10,000,000回)までに破壊するという統計的なデータがあります。疲労破壊を起こす下限の応力のことを疲れ限度と呼びますが、疲れ限度は、以下の要因によって左右されます。これらの要因を不利にならないように配慮することによって疲れ限度を上げることができます。 成形サイクルの短く、ショット数が多くなる金型の部品設計では、疲れ限度を上げる対策を講ずることにより、メンテナンス費用の低減を図ることができます。 【疲れ限度に影響を及ぼす要因】タグ:
- プラスチック成形品の表面に意図的に凹凸や模様を転写することがしばしば用いられています。成形品の表面に凹凸等を付加することで、次のような効果を得ようとしています。 滑り止め効果 光沢防止 視覚的高級感増加 摩擦抵抗増加 密着防止 保水効果・撥水効果 ウエルドラインを目立たなくする 成形品表面の傷防止 成形品の凹凸を設けるためには、金型のキャビティ表面にしぼ加工(エッチング加工、ブラスト加工等)を施します。 「しぼ」とは、成形品の表面に付加したしわ模様のことです。「皺(しぼ)」は、烏帽子(えぼし)の凹凸模様をそのように呼ぶことから来ている言葉のようです。また、布や縮緬を織るときぬ布地にしわをつけるために揉んだり絞ったりすることから、「絞る」が「しぼ」になったという説もあるようです。しぼ加工のことを英訳ではTEXTUREと訳します。タグ:
- プラスチック成形金型では、炭素鋼だけではなく様々な金属元素を合金した特殊鋼が使用されています。特殊鋼の選定の善し悪しによって金型の品質は大きく左右されます。ところで、一度製作されてしまった金型部品の鋼材の種類は、部品の来歴がはっきりしていない場合には判別が困難になってしまいます。特に、金型の補修や修繕をする場合には鋼種がわからないと困ることも多々あります。 そこで、鋼種の簡易鑑別法というのもがある程度経験的に確立されています。最も広く使われているのが火花試験法(spark test)です。火花試験は、サンプルをグラインダに接触させて発生する火花の色、形状、飛び方等で鋼種を判別する方法です。 グラインダの砥石に接触した鋼材は、摩擦熱によって高温に至ります、そして空気中の酸素と反応して瞬間的に燃焼を起こし、発火します。 発火の際には微量元素が影響して火の色や火花の分裂状態が変化します。 たとえば、炭素、珪素、マンガン、りん、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、コバルトなどの含有状態や含有量によって火花の種類は異なります。 火花試験法で活用できる内容には次のようなものがあります。タグ:
- プラスチック成形金型に使用する特殊鋼や金属材料の強度や硬さ、疲労強さなどは、金属材料に含有されているレアメタル(タングステンやバナジウムなどの希少金属)の量や混合方法だけではなく、金属材料を精錬するときの冷却速度やインゴットの体積などによっても大きく左右されます。 また、金属材料を焼き入れしたり焼き戻しをしたりすることでもその強度や硬度は著しく変化します。このような変化をミクロ状態で試験する方法に顕微鏡組織試験があります。 顕微鏡組織試験では、金属材料の結晶の状態や大きさ、結晶と結晶の境界(結晶粒界といいます)の状態を目視で観察することにより、強度や破壊の原因等を推定するのに大きな役割を果します。 顕微鏡組織試験の手順の概要は次の通りです。タグ:
- 黄銅は、銅と亜鉛の合金で、真鍮(しんちゅう)とも呼ばれています。英名はBrass で、音楽のブラスバンド→金管楽器→トランペットやホルンは黄銅製、ということで皆さんも聞いたことがある名前だと思います。 黄銅は、耐食性があり、比較的硬くで強度があり、機械加工性も良好でプラスチック成形金型では、冷却水用口金やバッフル板などに多用されていて、ミスミ製品にもたくさん使用されています。 金属学的には、黄銅は、Cu-Zn系合金と呼ばれます。2つの元素から成る合金であるため、二元系合金という種類になります。(Cuは銅、Znは亜鉛の元素記号です) この合金は、固溶体という状態を、α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)、ε(イプシロン)、η(イータ)の6種類構成しています。 通常使用されている合金は、αまたはα+β'の2種類です。 α固溶体は、Znが0から32%の状態で生成される金属組織で、軟質で機械加工性が良好で、塑性加工に適しています。しかし、高温領域ではもろくなる傾向がありますので注意が必要です。タグ:
- 材料名 組成 引張強さ(MPa) P20 0.33C-0.3Si-1.4Mn-1.8Cr-0.8Ni-0.2Mo 1007 4140タグ:
- 原油価格の高騰がリビア情勢、中近東の不安定要因さらに今回の大地震によって先行きが不透明な状態となっているようです。そうすると熱可塑性プラスチックの材料価格もコスト高の方向になっていく可能性があります。 原材料コストを低減させるアイデアとしてはナチュラルファイバーコンポジットという方法が考えられます。 ナチュラルファイバーとは、木材や紙等の天然繊維のことです。これらの天然繊維の含有率を30~60%程度に増やすことで石油由来のプラスチックの使用量を確実に減らすことができます。このようなナチュラルファイバーは、過去にも採用されたことがあります。それはオイルショックにより原油価格が上昇した時でした。 現在、有力視されているナチュラルファイバーには以下のようなものがあります。タグ:
- プラスチック射出成形金型を成形加工で連続使用しているとエジェクタピン、エジェクタスリーブとセンターピンスライドコアなど移動する部品の一部が作動不良を起こす場合がります。 作動不良は、摺動面の異常磨耗によって引き起こされる場合が大半です。異常磨耗はその原因により下記のような分類をすることができます。 (1)アブレシブ磨耗 移動する部品の材質に硬度の差がある場合に生じやすい異常磨耗です。 硬い材料が柔らかい材料に食い込んでひっかき(スクラッチ)を起こし、焼き付く現象です。 (2)凝着磨耗 金型部品の凸部分がぶつかり合って最も接触が激しい箇所が凝着を起こし、凝着部分が脱落して磨耗粉になり、磨耗が進行する形態です。金型部品の表面は一見滑らかに見えますが、実際には微少な凹凸があります、これらの凹凸の中で凸起部分が先に接触し、微小部分に摩擦熱が集中して作用し凝着を起こすメカニズムだと考えられます。
- チタン(Ti)は、軽量で(比重4.507。鉄は7.8)、融点が高く(1668℃)、室温では稠密六方格子の結晶構造を持つ金属です。熱膨張係数が小さく、電気抵抗が大きい特徴を持っています。 また、耐食性が良好でステンレス鋼や金、プラチナに匹敵する耐食性を有しています。 さらに、金属疲労に強く耐久性が良好です。 着色も可能で色を付けることもできます。 このような特性から金型部品への採用も可能性があります。しかし、機械工作が困難であるため特殊な工作機械や工具が必要になります。 チタンは、アルミニウム(Al)、すず(Sn)、ジルコニウム(Zr)等と合金として使用することも可能です。 チタン-ニッケル合金(Ti-Ni)は、原子比が1:1付近で組成されると形状記憶合金となり、金型部品としてもユニークな特徴を生かすことができるかもしれません。眼鏡フレームやゴルフクラブ、各種金属部品としては既に様々な分野で利用されています。 チタン合金は、特に航空機分野では軽量で高強度、耐熱性も良好なため、ジェットエンジン部品や航空機部品に多用されています。 また、医療器具や人工臓器の部品としても利用されています。タグ:
- ねじは、2以上の部品を締結するために用いられる機械部品で、プラスチック射出成形金型にもたくさん用いられています。日本で金型に使用されているねじのほとんどは日本工業標準(JIS規格)のメートル並目(なみめ)ねじです。しかし、さまざまな用途や分野では特殊なねじが使用されています。今回は、いろいろなねじの種類を紹介します。 ・メートル並目ねじ ・メートル細目ねじ ・ユニファイね(インチサイズ) ・ウイットねじ(旧・英国規格、ねじ山角度55°) ・管用テーパねじ ・管用平行ねじ ・四角ねじ ・台形ねじ ・ノコ歯ねじ ・電線管ねじ ・ミニチュアねじ ・自転車ねじ ・ミシン用ねじ ・カメラ用レリーズ ・顕微鏡対物ねじ ・デタッチャブル ロック ピット用ねじ ・ボールねじ ・小ねじ ・止めねじ ・木ねじ ・タッピンねじ ・基礎ボルト ・アイボルト ・ユルミ止めナット ・座付き袋ナット ・ミゾ付き丸ナット ・丸ナットタグ:
- 問題 以下の設例におけるマニホールドに作用する熱応力σを求めよ。 ただし、以下の前提条件に基づくものとする。 マニホールドの全長 L = 150mm 12月の日本の成形工場の室温 = 18℃ 使用樹脂 = ABS樹脂 マニホールド鋼材 = S55C 解答例 まず、温度上昇による寸法変化量⊿lを以下の計算で求めます。 ⊿l = α・⊿t ・L α(アルファ):マニホールド鋼材の線膨張係数(mm/℃) S55C場合、α = 12×10-6 (mm/℃)と仮定します。 ⊿t : 室温からマニホールド設定温度までの温度変化(℃)タグ:
- ホットランナー金型では、射出成形機のノズルから射出された溶融樹脂を、ホットランナーへ分岐させるためのマニホールドが通常使用されます。マニホールドとは、ランナーの分岐をさせるための板で、加熱ヒーターが組み込まれていて、マニホールド内の樹脂は、溶融状態を保たれて流動可能な状態に保持されています。 マニホールドには、樹脂の溶融状態を保持するための大量の熱が蓄積されることになり、その結果としてマニホールドの鋼材自身が熱膨張することになります。 鋼材が熱膨張するということは、外形寸法が膨張しますので、それによって圧縮応力が発生します。このように熱によりもたらされる応力のことを「熱応力」といいます。 熱応力の大きさを知らないと、金型、特に固定側の型板やモールドベース部品に大きな圧縮応力が作用し、キャビティやコアの変形、ばり、極端な場合にはキャビティの破損を引き起こす可能性があります。 そこで、今回は、マニホールドに作用する熱応力の計算方法を学びます。 マニホールドに作用する熱応力σ(シグマ)は、次式で計算することができます。タグ:
- 今回は、前回解説したサイドゲートの寸法決定の計算練習をします。 問題 ポリアセタール樹脂(POM)を用いた射出成形品であって、成形品の平均肉厚が1.5mm、成形品の面積が4900mm2 の1点ゲートをサイドゲートで設計したい。 この場合、ゲートの深さhと幅Wの設計寸法の目安を求めよ。 解答例 サイドゲート寸法の決定では次の2ステップで検討します。 【第1ステップ】ゲート深さの決定 まず、成形品の肉厚t(mm)を確認します。 t は、題意より t = 1.5(mm)です。 次に、成形材料による係数nを表1から求めます。 ポリアセタールの場合、n = 0.7 となります。 したがって、サイドゲート深さh(mm)は、タグ: