プラ型用部品
- プラスチック成形金型の部品どうしを締結する方法でもっとも基本的な方法は、六角穴付きボルトでねじ締結する方法です。六角穴付きボルトの先端にはJIS規格のメートルねじが加工されていて、おねじであるボルトが、めねじのらせん穴にねじこまれて締結が行われます。 しかし、六角穴付きボルトによるねじ締結は、繰り返し振動や熱膨張の繰り返しなどによってねじが徐々に緩んでくる場合があります。ねじがある範囲を超えて緩んでしまった場合には、締結している部品の位置がずれてしまったり、ねじが折れてしまう等の事故につながる可能性があります。 ねじを緩ませないためには、ねじを強く締めておくことは有効ですが、しかしあまりにも強く締めすぎると、ねじ山に塑性伸びが発生し、逆に折れるきっかけを与えてしまうことがあるので、ねじの締めすぎには十分な注意が必要になります。 そこで、機械工学的に、ねじのゆるみ止めを行う方法がいくつか考案されておりますので紹介をします。タグ:
- FRPとは、Fiber Reinfoeced Plastics の略称で、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等)にガラス繊維やカーボンファイバー等を混ぜて強化して成形品を造る方法です。モーターボートや住宅建材などの大型の強度が必要な成形品に採用されています。FRPの製造方法では、金型を使う場合は限定的で、大半は金型を使用しないで成形品を造ります。 FRPの製造方法には以下のような方法が実用化されています。 1.バルクモールド法(BMC) ガラス繊維のショートファイバーを熱硬化性樹脂と混ぜて、熱硬化樹脂専用の射出成形機で射出成形するか、トランスファー成形機で射出成形を行う方法です。比較的短い成形サイクルで量産加工ができますが、金型の設計ではノウハウを駆使しなければなりません。 2.ハンドレイアップ法 ガラス布を切断して型(マスター)の上に手で積み上げて、樹脂をはけやローラーで塗布して、硬化した後にマスターから取り外しで製造する方法。 3.スプレイアップ法 ガラスロービングを切断したものを、2液性の樹脂と一緒にスプレーガンからマスター型へ吹き付けて、硬化した後にマスターから取り外して製造する方法。タグ:
- WPCとは、Wood Plastic Conposite の略語で、木質の素材をポリマーへ混練させて作った複合材料です。WPCは、木目調の板材や建材として最近利用される事例が増加してきています。 地球環境保護の観点からも、製材所や山林から廃棄される木屑や間伐材を再生利用して成形品を作ることが可能ですので、エコロジーな素材としても注目を浴びています。 WPCには、低充填WPC(木質材充填率30%未満)、中充填WPC(30%以上 70%未満)および高充填WPC(70%以上)に分類されています。 木質の充填率が高いほど、木材に似た質感を得ることができます、しかし、強度が低下する傾向にあります。一方、木質の充填率が低ければプラスチックの特性である弾性がありますが、木質の風合いは少なくなります。用途によって木質の充填率は選択されます。 WPCは、以下のような事例に既に多数採用されています。タグ:
- 金型の材料そのものではありませんが、金型の錆止め目的や色分けを行う目的で、モールドベースや金型部品へ塗装を行う場合があります。塗装は、いろいろな塗料を塗布して行われます。 今回は、塗料について解説を行います。 塗料は、発色する固体成分(顔料)を液体成分(展着剤)へ分散させたもので、塗膜には不透明と透明のものがある。液体成分が油の場合、油性ペイント、水である場合を水性ペイントと呼んでいる。 塗料の塗布には以下のような方法がある。 (1)はけ塗り もっとも原始的な方法で、はけで塗料を塗布する方法。 (2)溶射法 塗料を火炎中で高速で通過させて半溶融状態にして圧縮空気で吹き付ける方法。 (3)流動浸し法 樹脂粉末を空気か窒素の中に流動状態とし、この中に余熱したワークを入れて表面に塗料を付着させる方法。 (4)ディスパージョン法 樹脂の微粉末を溶剤へ懸濁させてこれをスプレー塗装し、さらに蒸発乾燥後、加熱して焼き付け塗装する方法。 塗料の種類としては次のようなものがある。タグ:
- プラスチック成形金型にセメントやコンクリート使用するというアイデアは突飛すぎるかとも思われますが、既にいくつかの事例では型板等の一部として使用されています。特にコンクリートは、圧縮強さが高く、橋梁やビルには欠かせない素材となっています。圧縮強度が高い点を活用すれば、型板にも応用できるという訳です。しかし、あらゆる金型に応用が利く訳ではありません。その適用にはしっかりとしたコンセプトデザインが必要です。 さて、普段私たちが接する機会が少ないセメントやコンクリートについて基礎を理解したいと思います。 セメント(cement)とは、粘土質の原料(SiO2, Al2O3, Fe2O3など)と石灰質原(CaOなど)を微粉末として、これらを混ぜて1,400~1,500℃の高温で焼き、クリンカー(clinker)という物質を作ります。さらに、これに石膏を3%程度加え、微粉化したもののことです。これらはポルトランドセメント(Portland cement)と呼ばれています。 ポルトランドセメントは、下記の4種類の鉱物組成となっています。タグ:
- プラスチック成形金型は、その名の通り、「金属」で作られている型です。金属は、強度が高く、硬くて、熱を良く伝導します。金型では、鉄が多用されていますが、一部ではニッケル、銅、アルミニウム、亜鉛、チタンなども使用されています。 金属の組織を顕微鏡で観察してみると、規則正しい固まりを観察することができます。このような組織のことを結晶と呼んでいます。結晶は、金属の最も小さな構造である原子構造が規則性をもって結合して出来上がっています。原子はあまりにも小さすぎて電子顕微鏡でもはっきりと観察することは困難なのですが、X線を使用する等その他の方法で原子構造を分析することはできるようになってきています。 そうすると、金属の結晶構造には大きく3種類あることが判っています。 その3種類を以下に示します。タグ:
- 焼き入れされた炭素鋼は、マルテンサイトとなって、非常に硬度が高い状態になっていますが、もろい状態にもなっています。また、焼き入れ時にマルテンサイトに変化できない状態で残っている微量の残留オーステナイトもランダムに残っている状態にあります。 さらに、材料の内部に残留応力というものが封印されている状態のために、時間の経過とともに残留応力が緩和されてくるとひずみとなって寸法の狂いを生じさせることがわかっています。したがって、マルテンサイトのままの状態で金型部品として使用することは使用中に衝撃で部品が割れたり、寸法が狂ってくる危険性をはらんでいると考えるべきです。このような不安定な状態を改善するための熱処理が焼き戻しです。焼き戻しは、焼き入れされてマルテンサイトとなった炭素鋼を適度な温度に再加熱してから冷却する処理のことです。焼き戻しの加熱温度は、100℃~700℃ぐらいまで、その目的によって選定します。タグ:
- 炭素鋼の焼き入れとは、加熱してオーステナイトとし、それを急冷却してマルテンサイトを得る操作のことであるということを先回学習しました。 マルテンサイトを得るためには冷却速度が大事だということも知りました。 では、実際の金型部品を焼き入れする場合を考えてみますと、コアピンのような細い部品であれば、急冷却した場合には表面から内部までへも一瞬で冷却が進むと考えられますのでおそらく表面も中心部もマルテンサイトになっている確率が高いと思います。 しかし、鋼材のブロックのようにおおきな塊であった場合には、表面から中心部まで冷却が一気に進むことは考えられません。中心部の冷却には大きさにもよりますが数秒から数十秒もかかると思います。そうすると表面はマルテンサイトになっていますが、中心部はパーライトやソルバイトのままである可能性が高いといえます。 このように、焼き入れする部品の大きさや厚さによって、焼き入れ後の組織は均一であるかどうかは変動すると言えるのです。 このことを金型設計に生かすとすれば、焼入れをする部品を設計した場合には、鋼材のブロック状態で焼き入れするのではなく、要所要所には捨て穴を機械加工しておいて、冷却の効率を上げて、必要な部分は確実にマルテンサイト化させる工夫も重要になります。タグ:
- 炭素鋼のオーステナイト状態から急冷却をした場合にはどのような変化が起こるのでしょうか?その変化は、冷却の速度によって変わってきます。急冷却するときの速度のことを冷却速度と言います。冷却速度は、冷却する液体の温度や熱伝導率によって変わります。 例えば、水道水に冷やす場合と氷の入った水に冷やす場合、お湯で冷やす場合、ドライアイスの入ったアルコールに冷やす場合では冷却速度が違ってくるということが理解できると思います。 冷却速度の差によって以下のような組織の変化となります。 <冷却速度が非常に遅い場合:例えば空冷> オーステナイト→パーライト <冷却速度が遅い場合:例えば加温油冷却> オーステナイト→微細パーライト[ソルバイト(Sorbite)とも呼ぶ] <冷却速度が早い場合:例えばお湯冷却> オーステナイト→トルースタイト(Troostite) <冷却速度が十分に速い場合:例えば冷却水冷却> オーステナイト→マルテンサイト(Martensite)タグ:
- 市販されている炭素鋼の主要成分は、鉄(Fe)と炭素(C)ですが、鉄鉱石からの精錬の過程で不純物として硫黄(S)0.03%程度、リン(P)0.01%、珪素(Si)0.05%含んでいるのが一般的です。 炭素鋼は、炭素含有量によってその組織が変化することがわかっています。室温(20℃前後)では、炭素鋼は通常は純鉄(Fe)とセメンタイト(cementite,Fe3C)という結晶組織を形成しています。炭素鋼は常温では金属結晶という組織を形成しています。旋盤やフライス盤で炭素鋼を切削加工する際に発生する切り屑(切り粉)の組織もこの組織をしているということになります。 炭素の含有量が多くなるほど、セメンタイトの量が増えて行きます。セメンタイトの量が増えると硬さが増して行きます。 ここで、セメンタイトとフェライトの存在のしかたですが、通常は、交互に縞模様となって指の指紋のような形状で存在しています。このフェライトとセメンタイトで形成された縞模様組織をパーライト(Pearlite)と呼んでいます。この呼び名は、真珠(Pearl)のように輝いて見えるところから来ていると言われています。タグ:
- プラスチック成形金型やプレス金型に用いられている金属の大半は、炭素鋼とその合金です。炭素鋼のことを正確に理解しておかないと、これから金型設計をしようとする若い技術者の皆さんは、将来問題点にぶつかった場合に困ってしまうでしょう。ということで、今回から炭素鋼の知識を再確認する講座を連載することにしました。 炭素鋼は、鉄(Fe, Ferite)と炭素(C,Carbon)の合金です。炭素鋼は、Carbon steelと英訳されます。もっと詳しく説明すれば、炭素鋼は炭素量が2%程度以下の場合となります。それ以上の炭素量を含む場合には鋳鉄(Cast iron)と呼ばれています。 炭素鋼の炭素含有量によって、強度や焼き入れ性が大きく左右されます。炭素含有量が多いほど、一般に強度は強くなり、焼き入れした場合の硬度も高くなります。 炭素鋼にはいくつかの特別な温度が知られていて、それらを変態点(へんたいてん)と呼んでいます。炭素鋼の変態点にはA1変態点からA4変態点まであります。タグ:
- 今回は、熱輻射の基礎を説明します。 光よりも少し波長の長い赤外線がもたらす熱量が輻射熱です。 物体の表面より輻射される全輻射熱は、その表面の絶対温度の4乗に比例することが発見されました。(発見者 :Ludwig Boltsmann,Josef Stefan) 輻射熱を100%放出または吸収する理想的な表面を完全黒体と呼び、完全黒体からの全輻射熱流qb/Sは、次式で現されます。 qb/S=σ・T4タグ:
- 今回は、まず、熱伝導の基礎について説明します。 ◎厚さl(m、面積S(m2)の壁において、壁の両面の温度がt1(℃)、t2(℃)で時間的に変化しない場合を考えます。 ◎この壁面から放出される熱量 Q(kcal) は、面積S、温度差t1-t2 、時間τに比例します。 ◎したがって、Qは次式で表現できることになります。 Q=-λ・S・(t1-t2)・τ/l…(式1) λ:熱伝導率(kcal/m・h・℃) さらにこれを微分の形にすると、 dQ/dτ=q=-λ・Sdt/dx…(式2) λ:熱伝導率(kcal/m・h・℃) となります。 *式2をフーリエの法則と呼びます。 以下に主な物質の熱伝導率λを示します。タグ:
- プラスチック射出成形金型の設計では、成形材料から受ける熱量を金型側で受け取る熱の出入りがあります。これらは熱力学によって説明ができる物理現象です。所望の熱の状態に制御することで成形品の加工サイクルや成形品の品質を意図する内容に実現することができるようになります。 そこで、今回から熱力学の基礎について解説をしてみることにします。 熱力学とは、熱が高い温度の物体から低い温度の物体へ移動する現象を、力学として取り扱う学問です。 熱の移動には以下の3つの形式があります。 1.熱伝導(heat conduction) 2.熱対流(heat convection) 3.熱輻射(heta radiation) まず、熱伝導とは、物体内に温度差があるときや、異なる温度の物体を接触させた時に起こる現象のことです。物体の分子は、温度が絶対零度でない限り分子運動をしており、温度が高いほどそれは活発です。高温の分子運動が、低温の分子運動に伝わり、高温分子はその分だけ運動エネルギーが減少し温度が下がります。低温分子は、運動エネルギーをもらうことで熱エネルギーが増えで温度が高くなります。タグ:
- 金属材料に引張る力が加えられると、金属は伸びを生じ、ある限界を過ぎると破断することは良く知られています。しかし、金属の種類によっては外部の環境によって通常の破断強さよりも低い限界点で破壊が発生してしまうことがあります。このような現象のことを「応力腐食割れ」と呼んでいます。 応力腐食割れは、原因となる外部環境物質、その濃度、湿度、材料自身が保有している残留応力等によってその発生のしかたは変わってきます。 応力腐食割れは、金属の結晶粒の境界(結晶粒界と言います)を伝わって割れる場合と、結晶粒内を伝わって割れる場合があることがわかっています。 応力腐食割れを発生する金属の例を以下に示します。タグ: