射出成形金型の強度計算では材料力学を活用します。材料力学では様々な専門用語が登場しますが、用語の正確な意味を理解しておかないと、計算結果や計算過程での間違いを見過ごしてしまう場合があります。
今日の材料力学の計算は、エクセル等のソフトウエアを用いて計算ができますので、手計算の時代と比較すれば計算時間自体は大幅にスピードアップされました。しかし、計算過程を確認したり、入力するデータの意味を正確に理解をしておかないと、誤った定義のデータを入力してしまう危険が潜んでいます。
そこで、特によく使用される専門用語をピックアップしてみましたので、意味を正しく理解しておきましょう。
■等質
物体の各小部分の性質が全て等しいこと。金属材料は一般に等質であると考えられますが、プラスチック成形品や天然素材では等質であるとは限りません。
■等方
機械強度、熱伝導率、電気的性質等のある性質が材料の方向によって異ならない物体は、その性質に関して等方(isotropic)であると言います。
■異方
ある性質が、方向によって異なる物体はその性質に関して異方であると言います。
■弾性
物体に外力が作用すると、形状や寸法が変化します。これらの変化の全部または一部が外力を取り去ると同時に消え去る性質を、弾性(elasticity)と言います。
一部が弾性である場合には、部分弾性、全てが弾性である場合には完全弾性と言います。
■塑性
物体に外力を作用した後に変形が残る性質を、塑性(plasticity)と言います。
■応力
複数個の部材から構成される物体が、外力を受けて平衡状態にある場合、隣接する2個の部材の間の接触面上に生じ、大きさと方向とが相等しく、向きが相反する1対の働力と反力のことを、この接触面上における応力(stress)と言います。
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- 参考文献:湯浅亀一、材料力学演習(上巻)、コロナ社