第一次石油危機を契機に、太陽熱を利用するソーラーコレクターが急速に普及しました。これは太陽熱を吸収して水を温めて利用するものですが、水の温度が上昇すると温水からの放熱が多くなり効率が低下する宿命をもっていました。
これを防ぐためには、太陽放射スペクトルのうち、エネルギー密度の高い短波長光をよく吸収して熱とし、長波長の赤外線放射を小さくすることが必要であります。
従来は太陽集熱体に黒色処理を施していましたが、これは太陽熱をよく吸収しますが、集熱体からの熱放射損失も少なくなかったのです。このために熱線反射の必要性が生じました。つまり、太陽光波長領域(0.3〜2.5μm)では吸収率が大きく、赤外波長領域(3.0μm以上)では放射率が小さいという性質が求められました。
この目的のために太陽熱吸収塗料が用いられます。太陽熱吸収塗料は、透明に近いアクリル、シリコン、ウレタンなどのバインダーに半導体性質をもつ酸化銅、二酸化マンガン、酸化コバルト、酸化クロム、酸化鉄、硫化鉛、硫化ニッケルなどの微粒子を混合したものです。
この塗料を、赤外線放射率の大きい銀、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレスなどの表面や、これらを蒸着したプラスチック上に塗布することで集熱体からの熱損失を防ぐことができます。