非粘着性とは、物が付着しにくい性質のことです。我々の身近には、フライパンの内側やアイロンの底などにふっ素樹脂コーティングが施されているものがあって、その性能はよく知られていますが、これらは食材や布地がフライパンやアイロン底に付着するのを防ぎ、作業を効率的に行うことを可能にしています。
この塗料の代表は、四フッ化エチレン(PTFE)を使用したふっ素樹脂塗料であります。これは、貼り紙防止塗料にもなります。
ふっ素樹脂塗料のうち、非粘着塗料になるのは、四フッ化エチレン(PTFE)樹脂塗料、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合(FEP)樹脂塗料、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニールエーテル共重合(PFA)樹脂塗料、変性樹脂塗料、四フッ化エチレン・エチレン共重合(ETFE)樹脂塗料などです。
これらのうちPTFE塗料とFEP塗料は、溶媒に分散させたディスパージョン塗料であり、PFA塗料とETFE塗料は粉体塗料で供給されています。いずれもふっ素樹脂を融点以上に加熱して、ふっ素樹脂同士を融着して成膜しています。その他、変性ふっ素樹脂塗料、オルガノゾル塗料、溶液塗料などがあります。
このように非粘着塗料は、ふっ素樹脂塗料で占められています。ふっ素樹脂塗料は、非粘着性のほかに、しゅう動性、耐薬品性、電気絶縁性にも優れた性質をもっていますので、多方面に使用されています。応用例を【表1】に示します。
【表1】非粘着塗料の応用
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ディスパージョン塗料は、ふっ素樹脂を0.1〜0.4μmの微粒子にして、これを乳化剤を加えた水または有機溶剤中に分散させ、必要に応じて顔料やフィラーを配合した塗料です。粉体塗料は、5〜50μmの純粋なふっ素樹脂粉末を塗装したもので、ふっ素樹脂の特性を十分に発揮することができる塗料です。
変性ふっ素樹脂塗料は、ふっ素樹脂粒子をバインダーとなる他の樹脂塗料中に分散させ、塗料化したもので、塗膜化した後も粒子状のふっ素樹脂が存在します。バインダーとしては、エポキシ、フェノール、ウレタン、アクリル、シリコーンなどの樹脂が使われます。この塗料の非粘着性は低下しますが素材との密着性が向上し、比較的低温での焼付が可能になります。
オルガノゾル塗料は、フッ化ビニリデン樹脂粒子を溶解性の変性樹脂塗料中に分散させ、加熱焼付時にふっ素樹脂粒子を塗膜中の溶剤に溶解させる塗料です。これも焼付温度が比較的低いので、カーテンウォールやプレコートメタルに用いられています。
溶液塗料は、ふっ素樹脂を変性することにより有機溶剤に溶解するようにした塗料で、通常の塗料と同様な取り扱いができます。