鉄鋼は、構造材として建築物、船舶、橋梁、構築物などに多用されていますが、「さび」によるわが国の損失は年間3〜4兆円といわれています。この損失を少しでも軽減し、安全を確保するためには防さび塗料の使用は不可欠です。
従来優秀な防錆鉄鋼用塗料として、鉛酸カルシウムさび止めペイントが主流でありました。これのビヒクルとしては、油性系、長・中油性アルキド樹脂、油性フェノール樹脂系、塩化ゴム系、エポキシ樹脂エステル系などが用いられています。
防錆顔料の鉛酸カルシウム(2CaO・PbO2)中のPbO2含有量は68%であり、これがビヒクルとの相互作用で極めて強い保護力のある塗膜を形成し、金属を不動態体化させてさびの生成を防いでいます。しかし近年の鉛フリー化によりその姿を消しました。
最近の防錆塗料のうち、フッ素樹脂塗料とセラミック系塗料は、重防蝕塗料分野で特に注目されています。とくにフッ素樹脂塗料は、従来の重防食塗料より格段の性能が証明され、メンテナンスフリー塗料として活躍しています。とくに伸びの著しい建築用では、塗膜寿命設定が12年であったものが、フッ素樹脂塗料の採用により20年以上になっております。
セラミック系塗料は、セラミック顔料とアルキド樹脂や塩化ゴムで構成され、セラミック系顔料は塗装後、塗膜を浸透してきた水分により、顔料粒子同士や顔料と素地金属とが反応して立体的な網目構造をつくり、強靭できめ細かい塗膜になります。素地と塗膜の間は、弱アルカリ性を維持しますので優れた防食効果を示します。
最近の重防食被覆材料として次のようなものがあります。
1. | フレークコーティング 不飽和ポリエステル+ガラスフレーク |
|
2. | 無溶剤型ウレタン樹脂コーティング 特殊ポリオール+変性イソシアネート、電気防食併用 |
|
3. | ペトロラタムテープ+チェックカバー、複合防食工法 保護被覆体:FRP・ポリエステル・ポリプロ・塩ビなど |
なお、鉄鋼の防食には、耐食性金属被覆法、亜鉛・アルミニウムなどの溶射・めっき法、電気防食、塗装、ライニング(ゴム、樹脂、無機物)などがありますが、塗装が最も一般的な方法であります。