防かびの対象となる菌は、真菌類のうち鞭毛菌、接合菌、子膿菌、不完全菌などであります。自然界には、真菌類をはじめとする微生物が、空中、水中、土壌中などあらゆる場所に多数存在し、工業材料、製品などの表面や塗膜面に付着し、生育条件が満たされると生育を開始し、変色、汚染、劣化、変質などの原因となります。
従って、防かび塗料は、建築、電気製品、電子製品、燃料容器、食品加工装置、各種配管などの分野で、必要不可欠な塗料です。微生物が生育・繁殖するための環境条件は、栄養、水分、酸素、pHなどです。
塗膜のかび発生と相対湿度との関係は、57%以下では発生しにくく、57〜85%の範囲内では塗料組成に依存するかびが発生し、90%以上では通常のかびが発生するといわれています。
pHについては、大部分のかびはpH7.0〜7.5の中性〜微アルカリ性域で、生育に適したpHをもっています。エマルジョン塗料は、これらのpH範囲に調整されますので、微生物障害を起しやすい欠点をもっていることになります。
近年、事務所や住宅において、アルミサッシュなどによる気密化や暖房設備の充実により室内の結露が発生しやすく、浴室、台所、湯沸し室など従来から湿気の多いとされる場所でのかび発生が多くなっております。これらのかび発生は従来、梅雨時に限られておりましたが、近年は浴室、押入れ、ビニールクロス面などに一年中発生するようになりました。特に冬場は、暖房により結露発生が多く、かびの発生が助長されます。
防かび塗料には、作業性、光沢、密着性、隠蔽性、硬度、耐水性、耐アルカリ性、耐酸性、耐候性などの一般塗装性能のほかに、防かび性と安全性が要求されます。今日では、かなり安全性の高い低毒性防かび剤が開発されています。【表1】に、殺菌剤とその殺菌作用について示しました。
【表1】殺菌剤の作用
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これらを含む防かび塗料のビヒクルとしては、合成樹脂エマルジョン系、アルキド系、フェノール樹脂系、フタル酸樹脂系、塩化ビニル樹脂系、ラッカー系、アミノアルキド樹脂系などが用いられています。