殺虫塗料は、その機能上から殺虫塗料と木材保存塗料に分けられます。殺虫塗料は、塗膜上に析出した薬剤が、ハエ、蚊、虱、蚤、蜘蛛などの昆虫に接触することにより殺虫効果を発揮します。
殺虫剤としては、有機りん系、ピレスロイド系の薬品が家庭用として一般的ですが、昔から防虫塗料として有名なものに防蟻塗料があります。防蟻剤としてはトリフェニル錫化合物を含む重合物を成分とします。耐シロアリ性電線被覆材料、殺虫・殺菌被覆材料なども開発されています。
一般的な殺虫剤には、有機ケイ素系、有機錫系、有機金属塩系、有機りん系、カーバメートなどがあります。γ-BHC、DDT、クロルデン、トキサフェンなどの有機塩素系殺虫剤が配合された油性のつや消し型の殺虫剤が1945年米国で開発され、溶剤の蒸発によって殺虫剤が塗膜上に析出して、殺虫効果を発揮しました。
しかしこのタイプの殺虫塗料は、日本では普及しませんでした。それは、日本家屋では外国のように室内で塗料を塗る部分が殆どないのでその効果を十分に発揮できないことや、昭和46年に有機塩素系殺虫剤の使用が禁止されたことによります。
現在の家庭用殺虫塗料として、有機りん系或いはピレスロイド系殺虫剤が使われていますが、これは塗料としての機能を持っていません。
しかし殺虫剤の持続性や塗布面への固着性を高めるために、樹脂成分を配合した塗料タイプのものが売られています。その組成は殺虫剤として有機りん系(フェニトロチオン、DDVPなど)、特殊樹脂、有機溶剤で構成されています。
アルキルシリケート系無機ワニスに殺虫成分・殺菌成分などを配合した塗料が開発されています。殺虫剤としてはピレスロイド系、有機りん系、塩素系などが配合されており、忌避剤、殺鼠剤なども添加できます。これらは、オオクロアリ、クロゴキブリなどに有効といわれています。
この塗料は、[1] 成分がガラス質で皮膜強度が高いので、害虫による食害・カビの発生がないこと、[2] 皮膜硬化後は有機溶剤に不溶になるので、タイル洗浄剤や消毒薬品に耐える、[3] 皮膜は500℃の耐熱性があるので、木質部で効果を発揮する。などの特徴があります。
近年、生活環境の向上とともに、家庭や飲食店などでゴキブリの繁殖、木造家屋におけるシロアリ被害、家庭内の衣類害虫の被害が拡大しておりますが、これらに対して殺虫塗布剤が使われています。これらは、ラッカーや油性ワニスに殺虫剤を混入したものであります。しかも、これらによる塗膜は有機質であるために、カビの発生や経時安定性において、アルキルシリケート系より劣ります。
殺虫効果の性能評価は、ハエ20匹を殺虫塗膜に接触させ、接触時間と接触後の経過時間をパラメーターとして、仰転苦悶中のハエ数や死亡数を数える方法などがあります。