塗装製品が紫外線にあたると塗膜が劣化し、色あせなどの現象が起こります。
塗膜の劣化には、[1] 光沢や映像鮮明度の消失、[2] クラッキング、チェッキング、塗膜の完全さの消失、[3] チョーキング、[4] 付着の消失・剥離、[5] 黄変、[6] 顔料の色あせ、[7] 生物学的劣化などがありますが、これらはいずれも紫外線が大きく関わっています。
塗料用に用いられる高分子のアクリル、ポリスチレン共重合体、芳香族ポリエステル、芳香族ポリウレタン、などの劣化には紫外線が大きく寄与していることが分かっています。
高分子を紫外線から保護するために古くから行われている方法は、塗膜内の紫外線吸収性顔料、あるいは不透明顔料の使用であります。カーボンブラックや二酸化チタンのような顔料は、紫外線を吸収し、塗膜の劣化を防止します。このように紫外線安定性を増加させる顔料を、紫外線遮蔽剤と呼ぶこともあります。
しかしこのような顔料を使用すると、望ましくない色、透明性の欠除、貧弱な表面保護、など商品デザイン上好ましくありません。極端な例として、カーボンブラックを使用した場合には、色の選択は不可能です。
自動車塗装ではクリアコート(透明な上塗り)がますます重要になってきているので、不透明な紫外線遮蔽剤を使用することはできません。遮蔽剤はその直下の高分子だけしか保護できないので、高光沢塗膜の保護はできないことになります。
顔料による紫外線の保護には問題があるため、現在では分子状の紫外線吸収剤、光安定性抗酸化剤、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン光安定化剤などが開発されています。
最近女性が愛好するサンスクリーン化粧クリームのように、紫外線吸収剤が保護クリアコートの性能を向上させています。これは光安定剤と紫外線吸収剤を組み合わせることによって向上させるものです。
すなわち、二段構えの保護で、約1%の紫外線吸収剤により、望ましくない短波長のものは熱エネルギーに変換され、立体的に歪んだアミンのような光安定剤は、塗膜の劣化をもたらす発生フリーラジカルを補足します。これにより、自動車塗装システムで、ベースコート+クリアーコートの適用が可能になり、紫外線によるトラブルは大方解決されました。
亜鉛華(酸化亜鉛)は紫外線を吸収し散逸させます。亜鉛華の光学的性質は、波長領域380〜400ナノメーターで透過率が急激に変化し、紫外線は不透明、可視光は透明です。赤外線は1000ナノメーター以下で吸収し、それ以上では透過します。
反射率は、紫外線では低く、青色域で増加して、480ナノメーターで最大になり、赤外線領域で少し減少します。