工場などの生産活動や交通・学校などの社会生活に由来する騒音から、静かな環境を確保する手段の一つに防音があります。
(1)防音とは
防音は、手段・技術・材料・工法などから、次のように分類することができます。
(1)遮音
音の伝わってくる経路に壁や塀を立てて、空気の粗密の波である音を反射・遮断することで、こちら側に伝わってこなくする方法です。この場合、壁や塀は、音に対して大きさや重量が十分に大きくなければなりません。また、隙間のないことも必要です。
(2)吸音
音のエネルギーを吸収して、音を消滅あるいは小さくする方法です。この方法は使用される吸音材の吸音性能に左右されます。すなわち、その材質に入射する音のエネルギーに対する材質面で吸収されたエネルギーの比「吸音率」が大きいことが求められます。
(3)防振
この方法は、音そのものではなく、音の原因をとり上げます。その原因を抑えることにより結果的に音の発生を抑えることを狙います。音は何かが振動して発生するので、その振動を遮断したり、吸収してやれば音の発生を防いだり、音を小さくできます。
(4)制振
振動を制御して、音の発生を防止するものです。
これらのうち、防音塗料とよばれるものは、(3)(4)の防振・制振を対象としたもので、建築材料、自動車、鉄道車両、産業機器、電気製品など、主として金属素材を対象に利用されます。
(2)防音塗料
防振対策としては塗膜の粘弾性が、その防音効果の最も重要な点でありますが、被塗物の使用目的によって、耐久性、電気的特性、防錆力、作業性、コストなどを考慮することが必要です。
制振対策としては、床用弾性塗料が用いられます。デッキプレートやコンクリート床を歩く足音などをウレタン系などの弾性のある塗膜で消音します。また一般に騒音は、種々の周波数成分をもつものが普通であり、防音塗料の効果も周波数によって大きく変わります。
(3)用途
・ | 自動車、鉄道車両など(シャーシー・フロア・フェンダーなどの防振・防錆・断熱・耐摩耗性付与) | |
・ | 建築材料など(カーテンウォール・金属サイジング・パネル・折返し屋根・デッキプレートなどの防振・防錆・断熱や剛性付与) | |
・ | その他(家電製品・産業機械・エレベータ・ダクト類・事務機器類・厨房機器類などの制振・遮音性付与) |