難燃性防火塗料は、塗膜自体が難燃性で、自己消火機能をもっている塗料です。この塗料には、酢酸ビニルや塩化ビニル、アクリルなどの難燃性バインダーに多量の無機顔料を加えたエマルジョン塗料と、塩素、臭素などのハロゲンで難燃化した樹脂バインダーに三酸化アンチモンのような難燃助剤を添加した塗料があります。
三酸化アンチモンは、ハロゲン化合物と併用することによって、加熱下で著しく難燃性を高めることができます。これは生成した三塩化アンチモンSbCl3や三臭化アンチモンSbBr3が揮発性で、反応性が高いので、消炎効果を示します。
難燃性防火塗料の配合例は、エチレン・酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アスベストなどの無機繊維、水酸化アルミニウム、塩素化パラフィン、三酸化アンチモン系などがあります。
これに対して不燃性塗料は、無機バインダーに無機質顔料を多量に配合した完全不燃性であり、無機バインダーとしては、無機系耐熱塗料や有機・無機系耐熱塗料が用いられますが、その特徴は次のとおりです。
長所としては、分解ガスが少ない完全不燃性である。耐熱性が優れている。表面硬度が高い。耐候性が優れている。着色が自由で意匠仕上げに使える。
短所としては、取り扱いが複雑で作業性が劣る。下地との密着性、塗膜の柔軟性・耐水性などが劣るなどであります。
これらの欠点を補うために、水性エマルジョン樹脂・水ガラス・山皮(セピオライト、アタパルジャイトなどの含水珪酸マグネシウムを主成分とし、その表面に反応性に富む水酸基を持つ粘土鉱物)を主成分とした難燃性が開発されました。
また従来から水ガラスは、不燃性材料として使われてきました。例えば水ガラスに無機質または有機質の硬化剤を添加したものが使われてきましたが、皮膜に可とう性がないため、僅かな曲げや衝撃でひび、割れを発生していました。
現在は、水性エマルジョン樹脂、水ガラス、山皮、酸化チタン・カーボンブラックなどの耐アルカリ性着色顔料、炭酸カルシウム・シリカなどの充填剤、塩素化パラフィンなどのハロゲン化合物、三酸化アンチモンなどの難燃性付与剤、水分分散性のよい各種顔料、可塑剤、殺菌剤、消泡剤などを配合した難燃塗料が用いられています。これは、塗装作業性がよく、乾燥後の塗膜は可とう性に優れており、先に述べた不燃性塗料の欠点をクリアーしています。
難燃性の試験は、480℃に保った炉の中に試料を投入し、試料の着火の有無、黒煙発生の有無などを目視でランク付けしているようです。