寒冷地を走行する自動車や、極地を航行する船舶などは、窓やボデーに雪や氷の付着を防ぎ、凍結・融解の繰り返しによる船体などの腐食を防いで、安全を確保する防寒対策が必要です。これらの目的のために耐寒塗料が使われています。防寒塗料の中では、耐低温塗料や着氷防止塗料が有名です。
耐低温塗料は、氷海塗料ともいわれ、氷海域で使われる構造物や航行する船舶の喫水線近傍の耐食性向上と、氷との摩擦の減少、着氷を防止する効果などをねらった塗料です。
通常、エポキシ、ウレタンなどをビヒクルとし、ガラスフレークなどの骨材を含んだ厚膜型重防食塗料であり、膜厚は500〜700μmで、エアレス、二液分配型エアレス、マスチックガン、特殊エアスプレーなどで塗装されます。
この塗料に求められる機能の重要なポイントは、船底など外板の腐食を防ぎ、平滑な表面を保つことにより、氷との摩擦抵抗を軽減することにあります。氷に対する摩擦係数は、表面粗さが小さいほど、塗膜硬度が高いほど、接触角が大きいほど優れています。
このように水をよくはじく、即ち接触角が大きく、疎水性の大きい塗料を塗布することで寒冷地構造物への着氷を防ぐことができます。氷海塗料の性能は、以上のほかガラス転移点や樹脂の分子量も着氷防止に影響することが分かっています。【図1】に着氷力と接触角の関係を示します。 |
着氷力の評価方法は、【図2】に示すように外径φ30mmのステンレス製の器具を用い、この中に蒸留水を入れて凍結させ、氷温を−30℃に保ち、引張試験で塗膜と氷との付着力を測定します。無塗装の鋼板に対する氷の付着力は大きく、塗装面では1/2〜1/3に低下し、着氷防止効果が示されます。 |
また、塗膜の表面粗さが大きいほど着氷力は大きくなりますので、塗装表面は平滑で、かつ疎水性であることが求められます。接触角の増加は、着氷防止に効果があります。