この塗料は、温度変化や温度履歴を色彩で表示してくれますので、食品の衛生管理などに注目されている塗料です。
示温塗料は、特定の温度において明瞭に変色する化合物を顔料としたもので、次のような種類があります。
(1)不可逆性示温塗料
温度変化による不可逆的な色の変化を利用したもので、顔料としてコバルト、ニッケル、鉄、銅、クロム、マンガンなどの塩類が用いられ、これらの組成中にアミン、アンモニウム塩、炭酸基、しゅう酸基などを含みます。
変色は、アンモニア、炭酸ガス、水などの発生を伴う熱分解によって顔料化合物の組成そのものが変化して起りますので、変色は不可逆的です。一旦変色すれば、その後温度が下がっても原色に戻ることはありません。適用範囲50〜400℃
(2)可逆性示温塗料
この示温塗料に用いられる顔料は、結晶形の転移などに伴う色の変化を利用したもので、Ag2HgI4(変色温度50℃)、Cu2HgI4(70℃)、Ag2HgI4-Cu2HgI4固溶体(35〜70℃)などや、有機染料化合物なども用いられています。
この塗料は、示温温度に到達すると変色しますが、その後温度が下がれば原色に復帰します。
(3)積算型示温塗料
この示温塗料は、不可逆性タイプでありますが、温度と時間の相乗作用で変色します。示温材としては、硫黄化合物や、これに多価金属化合物との混合物が使われます。
変色は、水蒸気の存在下で一定時間加熱すると、多価金属の硫化物を生成して変色します。
(4)準可逆性示温塗料
この塗料は、加熱により結晶水を失って変色しますが、多湿な雰囲気で再び結晶水を取り入れ復色する化合物を示温材として用いています。NiやCoのヘキサメチレンテトラミン塩などが一般に使われています。