プラスチック射出成形金型は、成形加工を行った後で、分解清掃などのメンテナンス(保守点検作業)が必要です。
成形材料から発生する「やに」成分やガスが凝集したデポジットなどが、キャビティやコアの表面や分割面に蓄積します。
これらの成分は、金型の温度がまだ温かいうちは液状ですが、一度温度が低下しますと固化してしまい、そこから空気中の水分が付着して錆びや腐食が進行したりもします。
このような状態に陥りますと、成形品の表面品質や寸法精度が変動し、またエアーの逃げが不十分となりショートショットが起きる場合もあります。
メンテナンスの頻度は、成形品の品質管理状況や金型の大きさによってまちまちです。
短い周期の金型では数日に1回、長い周期の金型でも2か月に1回程度はメンテナンスが必要です。
メンテナンスの一般的な方法は、金型を分解し、それぞれのパーツを超音波洗浄したり有機溶剤で洗浄し、錆びている部分を磨いたりめっきしたりします。
磨耗が激しい部分は、入れ子修正したり、部品交換を行います。
メンテナンスを効率的に行うためには、工具類、道具類の工夫が重要です。
洗浄用ブラシ、分解工具、木製工具、布製治具、バフ、サンドペーパー類、磨きクリーム、ラップ剤、特製割り箸、竹へら、竹櫛、エアーツール、クレーン補助具、Zライト、ルーペなどを工夫します。
作業台も作業しやすいように改善します。作業しやすいテーブル高さ、歩行スペース、クレーン配置、エアガン配置等を工夫します。
図面を広げるテーブルやホワイトボード、デジカメ、ビデオカメラの活用も有効です。
メンテナンス効率を高めるためには、金型の設計時点から考慮が必要です。
分解しやすいように分解用孔を設けたり、フックボルト用ねじを設ける、組み込み補助用ねじ孔を設けるなど工夫します。
コア類がばらばらにならないようにフレームブロック構造としたり、キーで固定する構造も有効です。
コアピン類の配置番号を刻印したり、方向性を一定にするためにツバカットを工夫することもしばしば採用されます。