プラ型用部品
- プラスチック成形材料の種類と、成形品に求められる機能によって、キャビティ用鋼材の選定が行われます。 鋼材の選定が適切でないと、仕上げ面が滑らかに磨くことができなかったり、成形加工の最中に腐食が進行してしまったり、摩耗が早く進んでしまったりする場合があります。 表に、主要なプラスチックの種類と推奨鋼種の選定の目安を示します。タグ:
- プラスチック射出成形金型は、量産の成形加工を行っておりますと、ある確率で初期故障や偶発故障に遭遇する可能性があります。 前回の講座では、故障期について解説しましたが、今回は、平均故障間隔(MTBF)について説明します。 MTBFとは、「Mean Time Between Failures」の略称です。金型が故障してから次の故障が発生するまでの平均時間がMTBFとなります。したがいましてMTBFの単位は、時間(hr、min等)若しくはショット数が使用されます。 MTBFの数値が大きな場合には、その金型は故障が発生しにくい金型であるという評価をすることができます。 逆に、MTBFの数値が小さな場合には、その金型は故障しやすく、安定した成形加工の生産計画が立てにくい金型であると評価されます。 もう少し現実的な事例でMTBFを考えてみましょう。同じ設計図面を使用して、複数のリピート金型を製作する場合、1型目の金型は、初期故障や偶発故障が頻発しやすいのですが、それらに対して技術的な改善を加え、2型目以降はそのような故障は発生しにくくなります。したがって、2型目以降の金型のMTBFは、1型目の金型よりも大きな数値となっています。タグ:
- 金型を起工する場合には、どのぐらい故障しにくいような構造にすれば良いのかを、検討する必要があります。 具体的には、コアピンの突き当て面や食い切り面の摩耗やコアピンの破損、ガスによる腐食などによる金型の故障を、どのように保証しようかということです。 これらの保証期間を長くするためには、高級な鋼材を使用したり、丁寧な熱処理、特殊コーティング被覆、ステンレス鋼の採用などの手段が考えられますが、これらの手段にはコストがかかります。 つまり、金型の信頼度(金型の故障のしにくさ)Rを向上させるためには、金型製作コストが高くなる傾向にあります。(【図】参照、A曲線) 一方、金型の信頼度Rが低い場合には、摩耗した部品の交換やメンテナンスなどのコストが高くなる傾向があります。(【図】参照、B曲線)タグ:
- キャビティやコアの設計を進める上で、部品形状の変更を検討した方が良い場合があります。例えば、下記のような場面が考えられます。 コアピンの破損を防止したい場合 成形品の離型をしやすくしたい場合 金型の組み立てをしやすくしたい場合 金型のメンテナンスを工夫したい場合 キャビティサイズをコンパクトにしたい場合 このような場合には、一般に次のような形状変更の手法が検討されます。 (1)シャープコーナー → Rを設ける(【例1】参照) 凸形状の根元にシャープコーナー(角)があると、曲げ応力やねじり応力が作用した場合に応力集中が発生し、破損しやすくなってしまいます。応力集中とは、ある部分に応力が集中的に作用してしまう現象で、材料力学的には、最大で一般に作用している応力の最大で3倍もの応力が作用してしまいます。 応力集中を緩和するためには、シャープコーナー部にできるだけ大きなRを設けることが有効です。タグ:
- ピンポイントゲート先端形状のデザインについて解説します。 ピンポイントゲート構造を採用するときに、金型設計をなさる方が最も苦心されることの1つに、ゲート先端部のデザインがあります。 ゲートの先端形状は、キャビティ内部に溶融樹脂を注入する際の流入状態を左右します。また、樹脂の充填された後の保圧のかかり具合や、ガラス繊維入り樹脂の場合には、繊維の配向状況なども左右します。 さらに、ゲートが成形品から切断される際のゲートの切れ残り状況も左右します。 基本的なゲートの先端形状のパターンを【図】に示します。タグ:
- フールプルーフ(fool proof)とは、直訳すれば、多少言葉は上品でありませんが、「ばか防止」といったニュアンスとなります。 具体的には、人間がうっかりミスやポカミスによって誤って組み立てたり、分解したりしないような機構や形状のことを指します。 金型の事例説明しますと、極めて類似している2本のコアピンAとBがあったとします。メインコアに組み込む位置は、決まった位置です。 仮に、金型を分解してメンテナンスした場合、組み込み位置をA、B逆に組んでしまうおそれが潜在的に存在します。どんなにベテランの方でも、うっかりミスや勘違いは完全に排除することはできません。 そこで、コアピンのツバ部を異なる形状にカットしておいて、メインコアの組み込み穴もその形状に加工をしておけば、誰が組み込んでもコアピンA、Bは正規の位置にしか組み込めませんから、絶対に組み間違いはあり得ません。 このような工夫を「フールプルーフ」と言います。タグ:
- キャビティ・コアに使用する鋼材の材質は、機械加工性、鏡面磨き性、価格、耐摩耗性などを総合的に判断して決定されます。 今回は、耐摩耗性を中心として金型寿命を考えた場合の鋼材の選定基準の目安を、以下に示します。タグ:
- 2個取りの場合、キャビティを配置する場合、スプルーに対して天地方向に配置するか、左右方向に配置するか迷う場合があります。 天地方向に配置した場合(【図1】)には、スプルーに糸引きが発生してしまった場合に、【図2】に示しますように、キャビティ掘り込み上に糸引き、またはスプルー+ランナーが重なり、誤って型締めした場合にキャビティのパーティング面を潰してしまう危険が伴います。 連続成形を行っている場合には、何らかの悪条件が重なった場合に、【図2】のような場面に遭遇する可能性が潜んでいます。タグ:
- 1個取り金型では、スプル−に対して型板の半分側のみにキャビティを配置する事例が多くなります。(【図1】の例参照) 型板のサイズが大きくなりますと、片側のみにしか受圧部分がないために、射出成形時に型締め力のバランスが崩れ、成形品の周囲にバリが発生する場合があります。 このような場合にバリを防止するために型締め力を無理に高めに設定したり、あるいは充填圧力を低めに設定したりしますと、思わぬ部分に別の不具合が発生する可能性があります。タグ:
- スプルーに対してキャビティの配置が左右不均等な場合(【図1】の例)、キャビティの形状によっては、溶融樹脂の充填の際にキャビティブロックとコアブロックの相対位置が位置ずれを起こし、成形品の寸法が変化したり、バリが発生することがあります。 このような不具合の発生を防止するためには、【図2】に示すように、キャビティ彫り込みとは反対方向にテーパーブロックセットを配置することにより位置ずれを防ぐことが可能です。タグ:
- ピンポイントゲート構造で問題となる点としては、下記のような内容が挙げられます。 1) ゲート先端部が成形品の表面に突起として残存してしまう、あるいは成形品の一部をむしり取ってしまう。 2) 充填圧力や保圧が高い割には、充填がスムーズに運ばない。 このような問題は、ピンポイントゲートを採用する度に金型設計者が悩まなくてはならない課題となっています。 以下に、これらを解決するための技術的な手段について解説します。 【図1】は、一般的なピンポイントゲート構造を示しています。何の配慮もしていないゲートデザインではこのような形状をしています。 一方、【図2】には、上記問題点を解決するための工夫が施されたデザインとなっています。タグ:
- ピンポイントゲート構造でのランナーロック形状は、様々なパターンが採用されておりますが、一般的に多用されているパターンは、【図1】に示すタイプでしょう。 【図1】のタイプは、頭部にアンダーカット形状を有するランナーロックピンを、ランナー根本に配置し、固定側型板とランナープレートの間が開く際にランナーとゲートを強制的に離型させる方式です。 ランナーロックピンは、ランナープレートにすきまばめで勘合され、固定側取付板にプレートやスクリュープラグによって固定されています。 この方式では、薄肉の成形品や流動時の圧力損出が大きな樹脂の場合、ランナーロックピンの頭部によりランナー内の流路が狭められ、成形条件の面で高い充填圧力や保圧が必要になる場合があります。タグ:
- 射出成形金型の可動側と固定側の位置ずれを防止するためには、ガイドポスト−ガイドブッシュを使用したり、「位置決めブロックセット」、「テーパブロックセット」を使用したりしています。 型板の「キャビティ取り付け用ポケット彫り込み位置」と「ガイドピン」、「ガイドブロック」の位置関係で考えた場合、可動側型板のみ若しくは固定側型板のみでは、位置精度が管理されていたとしても、可動側型板と固定側型板を合わせた場合には、相対的な位置精度が保てない場合があります。 このような不都合を合理的に解消するためには、「サイドストレートブロックセット」が有効です。 サイドストレートブロックセットは、型板を可動側と固定側を組み合わせた状態で、側面に取り付け用の溝または彫り込みをエンドミルや平面研削により加工し、取り付けをします。 したがいまして、可動−固定の型板の相対位置は、現物合わせにより正確に位置決めができます。 材質は、SKD11を使用し、硬度58〜62HRCと耐摩耗性に優れた仕様となっています。 コネクターや電子部品などの精密金型の位置決め部品としては、最適なパフォーマンスを発揮します。タグ:
- 分割された入れ子を組み立てる際には、管理された入れ子の寸法公差の下でないと、組立の際に穴に入らなかったり、大きな隙間が生じてしまったりする可能性があります。 このような部品同士の寸法公差の管理の考え方として「はめあい」があります。 「はめあい」は、軸と軸受けの関係に代表されるように、軸形状と穴形状のクリアランスの許容寸法公差の管理の考え方であり、下記の3つのはめあい方法があります。 (1)すきまばめ 軸の寸法公差と穴の寸法公差のいずれの組み合わせでも、常にすきまが生ずるはめあいです。 (2)中間ばめ 軸の寸法公差と穴の寸法公差の組み合わせにより、すきまが生ずる場合としめしろが生ずる場合があるはめあいです。 (3)しまりばめ 軸の寸法公差と穴の寸法公差のいずれの組み合わせでも、常にしめしろが生ずるはめあいです。 また、はまり合う穴と軸を加工するために、穴若しくは軸のいずれか一方を基準とし、他方は基準に合わせる2方式があります。「穴基準方式」と「軸基準方式」です。タグ:
- キャビティ、コアの構造として入れ子分割構造が多用されています。分割は、下記のような事項を目的としています。 1. 機械加工が困難な部分を別部品として分割し、機械加工しやすくする。 機械加工コストが低減され、加工品質が向上できる。 2. 分割面からエアーやガスを排出させるエアーベント機能を持たせる。 3. 破損しやすい部品を交換しやすいようにあらかじめ分割しておく。 入れ子分割のパターンとしては、以下のようなパターンが考えられます。 1. 丸コアピン形状分割 2. 角形コア形状分割 3. 異形状分割 これらの中で、角形コア形状に分割した場合の組み込みにおける、ちょっとしたノウハウを紹介したいと思います。 【図】には、角形コア形状の分割例を示します。角形コアを挿入するためには、メインコアに角形状の穴を機械加工する必要があります。 加工法は、ワイヤーカット放電加工、形彫り放電加工、さらにメインコアを分割して研削加工などが一般的に採用されます。タグ:
- ランナーは、スプルーから成形品まで、溶融樹脂を流すための流路です。ランナーの断面形状は、成形品の大きさや樹脂の種類、想定される成形条件などによって選択がなされます。 今回は、ランナーの断面形状を選択するための基本的な基準を解説します。 【図】には、代表的なランナーの断面形状を紹介しています。 ランナーは、以下の3タイプから選択されます。タグ:
- サポートピラーは、可動側型板の底面の射出圧力による、瞬間的なたわみを防止するために取り付けられる支柱のことです。 可動側型板のたわみを低減するためには、以前に解説しましたように、適切な型板底面の厚さを確保することが基本となりますが、サポートピラーを用いて、補強する手法も経験的に多用されています。 サポートピラーは、通常は、円柱状の炭素鋼(S50C)非熱処理材やSKS3熱処理(54HRC程度)が使用されています。 サポートピラーは、適切な位置へ配置をすれば、極めて効果的な成果を発揮します。 【図1】に示すように、サポートピラーを型板中心部から離れたところへ配置しても、十分な威力は発揮できません。なぜならば、一般に射出成形加工では、スプルーが型板中心に配置されており、そこからランナーが分岐してゆきます。したがいまして、型板の中心部には大きなたわみが生じます。タグ:
- 前回解説した可動側型板の受け板厚さの決定について、ケーススタディを行ってみましょう。 問題 右図に示す構造の可動側型板において、受け板の厚さhはどのぐらいとするのが適当でしょうか。 ただし、型板その他の部材の材質は、S50C、使用する樹脂は、HIPSナチュラル材である。 解答例 受け板の厚さhは、次式で計算されます。タグ: