プラ型用部品
- 前回は、可動側型板(受け板)のたわみ量の計算方法を紹介しましたが、今回は、逆に型板(受け板)の厚さを計算する方法を解説します。 金型設計をする際には、むしろこちらの計算方法の方が有益かもしれません。 基本的には、前回に使用した計算式を受け、板厚さhについて整理します。 したがいまして、次式で計算が可能です。タグ:
- 問題 右図に示す構造の可動側型板は、最大どのぐらい、たわみが発生すると予測されますか。 ただし、型板その他の部材の材質は、S50Cとする。 解答例 最大たわみδmaxは、次式で計算されます。タグ:
- 射出成形品のパーティング面の周囲にバリが発生したり、成形品のスプルー付近の高さ寸法がプラスしてしまった経験はありませんか。 計算の前提となる可動側型板の形状を【図1】に示します。 最大のたわみδmaxは、型板の中心線上に発生します。 計算式は、下記の通りです。タグ:
- プラスチック射出成形金型には、溶融樹脂の充填の際に高い内部圧力を受け、また型締めの際にも高い圧縮応力を受けます。さらに、大きな金型になると自重により曲げ応力を受けたりもします。 外部や自重による応力に対して、変形や破壊が発生しないようにするためには、金型の剛性を強くする必要があります。 ここで、剛性(ごうせい)について、基本に立ち返って再認識をしてみたいと思います。 剛性(Rigidity)とは、荷重に対する変形抵抗のことです。材料の縦弾性係数Eと横弾性係数Gが剛性を左右します。 EまたはGの数値が大きな材料ほど、高い剛性があります。つまり、曲げやねじりに対して強い抵抗を示します。もう少し、わかりやすく言えば、曲がりにくく、たわみも小さいということです。 例えば、SCM440系プリハードン鋼のEは、203×104(kgf/cm2)ですが、SKD11(冷間ダイス鋼)のEは、210×104(kgf/cm2)ですから、SKD11の方が剛性が高いと言えます。タグ:
- コアピンの曲げ応力についてケーススタディを行います。 前回までに曲げに関する基礎知識を解説いたしましたので、今回は、ケーススタディを行ってみたいと思います。 問題 【図1】に示すピンの根本には、最大でどのぐらいの曲げ応力が作用しているか? 解答例 部材に作用する曲げ応力σは、次式で計算します。タグ:
- 曲げ応力の予測に重要な金型部品の断面係数について解説します。 プラスチック射出成形金型の変形や曲げに関する強度計算を行う際に、「断面係数」という用語がしばしば登場します。 力学計算をより正確に理解しながら進めることができるように、「断面二次モーメント」と同様に「断面係数」とはどのようなものなのかを、あらためて理解しておきましょう。 「断面係数」とは、部品の断面形状によって特定される数値です。その点では「断面二次モーメント」と同様です。 「断面係数」は、部品の断面形状によってのみ変化します。したがいまして材質とは一切関係がありません。例えば、断面形状が同一であれば、非熱処理鋼でも焼き入れ鋼でも、木材でも「断面係数」は同一の数値となります。 「断面係数」の力学上の定義は、下記のようになります。 「梁(はり)の断面の中立軸に関する「断面二次モーメント」の値を、中立軸から外表面までの長さで除したものである。」 したがって、断面係数Zと断面二次モーメントIの関係式は下記のようになります。タグ:
- 曲げの予測に重要な、金型部品の断面二次モーメントについて解説します。 プラスチック射出成形金型の強度計算を行う際に、「断面二次モーメント」という用語がしばしば登場します。 力学計算をより正確に理解しながら進めることができるように、「断面二次モーメント」とはどのようなものなのかを、あらためて理解しておきましょう。 「断面二次モーメント」とは、部品の断面形状によって特定される数値です。曲げ強度や射出圧力によるたわみ量の推測に頻繁に使用されます。 「断面二次モーメント」は、部品の断面形状によってのみ変化します。したがいまして材質とは一切関係がありません。例えば、断面形状が同一であれば、非熱処理鋼でも焼き入れ鋼でも、木材でも「断面二次モーメント」は同一の数値となります。 「断面二次モーメント」の力学上の定義は、下記のようになります。 「ある断面を無数の微小面積dAに分割し、1つの軸Xからの距離をYとするとき、微小断面積と距離の2乗との積を、断面全部について加え合わせたものである。」 これを式で表現すると下記のようになります。 断面二次モーメントタグ:
- 前回解説した金型部品の熱膨張について、ケーススタディを行ってみましょう。 問題 20℃の機械加工室において製作されたコアピンの全長が30.52mmであった。このコアピンを150℃に昇温させた場合、熱膨張によりどのぐらい伸びるか? ただし、コアピンの材質は、SCM440系プリハードン鋼とする。 解答例 金属の熱膨張に関する計算式は、下記の通りです。 この式に数値を当てはめてみましょう。タグ:
- プラスチック射出成形金型用部品の熱膨張について、基本知識を解説します。 プラスチック射出成形金型は、適正なキャビティ表面温度に保持するために、30〜150℃の温度に保温されます。 他方、スプルー、ランナー、キャビティには溶融樹脂が流入し、180〜300℃前後の樹脂から受熱します。 金属は、一般に温度が上昇すると熱膨張をします。従いまして、プラスチック射出成形金型の構成部品も熱膨張をしています。 熱膨張は、ガイドポスト-ガイドブッシュの勘合を阻害したり、スライドコアの動きを悪くしたり、コアピンの寸法が膨らんだりする影響を与える場合があります。 基礎的な熱膨張の寸法変化は、次式で計算ができます。タグ:
- コアピンの樹脂圧力による、曲げ変形の基本計算式の考え方を説明します。 射出成形では、キャビティ内部に高い充填圧力が作用しますので、コアピンなどの細長い形状部品は、変形したり、場合によっては折損する事故が発生します。 コアピンに作用する圧力は、溶融樹脂の流動パターンやゲート配置等によってケースバイケースでありますから、正確な強度計算は実際はかなり難解な計算となってしまいますので、通常は、圧力の作用状況を近似(単純化)して基本計算のみ行っております。 今回は、コアピンの変形(曲がり)についての基礎的な計算方法を紹介します。 片持ち梁構造における最大曲げ変形量(δmax)は、次式で計算されます。タグ:
- 「円筒型キャビティ」の強度計算の演習問題です。前回解説しました「円筒型キャビティ」の側壁厚さの強度計算について、演習問題を解いてみましょう。タグ:
- 「円筒型キャビティ」についての側壁厚さの計算方法を解説します。 キャビティ側壁の強度計算の最終シリーズとして、円筒型のキャビティについての 強度計算を説明します。 今回取り上げる例題は、「円筒型キャビティ」についての側壁厚さの計算例です。 例題のキャビティ形状を【図1】に示します。 【図1】におけるキャビティの外形半径R(キャビティ側壁の厚さ)は、下式で求めることができます。タグ:
- 前回までは、「底面が分割されている長方形キャビティ」の側壁厚さの強度計算について説明をしてきましたが、今回からは異なる構造のキャビティについての強度計算を説明します。 今回取り上げる例題は、「底面が一体構造の長方形キャビティ」についての側壁厚さの計算例です。 例題のキャビティ形状を【図1】に示します。 【図1】における側壁の厚さhは、下式で求めることができます。タグ:
- 前回解説しました「底面が分割されている長方形キャビティ」の側壁厚さの強度計算について、演習問題を解いてみましょう。 問題 【図1】に示すSCM440系プリハードン鋼製キャビティの側壁を厚さは、いくらに設定すればよいか? ただし、キャビティ側壁の許容最大たわみは0.01mm、成形材料はABS樹脂を使用するものとする。 解答例 キャビティ側壁の厚さhは、次式で計算をします。タグ:
- 前回はキャビティ(固定側入れ子)の外形寸法の決め方について説明をしましたが、今回からはキャビティ側壁の厚さの強度計算の実際について解説をします。 今回取り上げる例題は「底面が分割されている長方形キャビティ」についての側壁厚さの計算例です。 例題のキャビティ形状を【図1】に示します。 【図1】における側壁の厚さhは、下式で求めることができます。タグ:
- キャビティ(固定側入れ子)の外形寸法はどのようにして決めていますか? 多くの場合は、過去の類似金型の寸法を参考にしたり、経験と勘で決めているのが実状のようです。 正しい寸法の決定手順を知っておけば、金型が樹脂圧力で破壊する事故の危険性から解放され、また必要以上に頑丈でしかも大きな金型を製作する無駄を省くことができます。 以下に正しい寸法の決定手順を説明します。 手順1:最小壁厚さの計算 キャビティは、鋼材ブロックに凹み形状を彫り込んで製作されています。彫り込まれた成形品の反転形状と鋼材外形の間の壁の厚さhは、ある特定の厚みがないと、樹脂の充填圧力によって割れたり、大きな変形をしたりします。 この厚みは、材料力学の計算式を応用してあてはめることにより、理論計算により推奨値を計算で求めることができます。 計算式は、 によって異なりますので、適切な計算式を選択します。タグ:
- 金型部品に使用する鋼材の強度や弾性を示す物性質として、「縦弾性係数」があります。 縦弾性係数は、通常「ヤング率」とも呼ばれています。 縦弾性係数は、鋼材を引っ張った際に発生する「ひずみ」と「引張応力」の比例係数のことです。 これらの関係を数式で表しますと、下記のようになります。 σ=E x εタグ:
- キャビティ・コアは、成形品の形状を形作る重要な部品ですが、その作り方には大きくわけて二種類の方法があります。 「一体構造」と「分離構造」がその製作方法です。 「一体構造」は、文字通りキャビティ・コアを一体の部品で製作する方法です。 「分割構造」は、キャビティ・コアを2以上の部品に分割し、組み合わせる方法です。 それぞれの方法には長所と短所があります。【表1】にその一覧を示します。また、【図1】には各構造の事例を示します。 【表1】一体構造と分割構造の長所と短所タグ: