メカニカル部品
- 【図1】に各種めっきにおける水素脆化率を示しました。電気めっきにおいては、製品を陰極にして電解するため、水素脆化の可能性は容易に想像できますが、電気を使わない無電解ニッケルめっきでも中程度の水素脆化は発生します。これは直流電気の代わりに使われる還元剤の酸化により、水素が発生するためと考えられます。 またクロムめっきは、他のめっきのように可溶性陽極(亜鉛やニッケル陽極)を使って金属イオンを供給するめっきと異なり、鉛やグラファイトなどの不溶性陽極を使って、浴中に溶解しているクロム酸イオンを還元して金属クロムを析出させるめっきでありますから、水の電気分解が盛んに行われ水素が発生します。
- コンデンサのような実装部品や組立用インサート部品などは、上面・下面や前後方向などの方向整列が 必要です。整列対象の部品の特徴(形状の違い、識別マークなど)を利用して方向整列を行います。 前後整列の方向転換技術の解説 (1)前後の形状差がある場合 前後方向の形状差を利用して方向整列させる工法が多く採用されます。 a)方向転換が不要な部品の挙動 b)方向転換が必要な部品の挙動タグ:
- 酸洗などの前処理で鋼中に侵入した水素は、吸蔵した直後であれば鋼の表面に留まっていると考えられるので、めっきなどの皮膜が形成される前に水素を放出させた方がよいです。酸洗後放置するだけでも、【図1】に示すように、徐々に放出します。 水素の拡散移動は、温度が高いほど早まるので、加熱すれば水素放出時間は短縮できます。通常、酸洗の後に、アルカリ洗浄の工程があり、これは60〜70℃と比較的温度が高いので、吸蔵した水素を放出するのに好都合です。実験の結果を【図2】に示します。
- 部品整列技術は、部品の小型傾向により難易度が高くなってきます。部品整列には下のような整列処理が必要ですが、0.5mm程度のチップ部品を高速で方向転換させる自動化手段は、長い年月によるローコストオートメーション技術の蓄積から得られる高度技術です。タグ:
- 酸洗は、鉄鋼表面の錆やスケールを除去するために行いますが、鉄鋼の過剰溶解を防ぐ目的で、酸洗抑制剤としてインヒビターが使われてきました。実はこれらは、鉄の溶解を防止すると同時に、水素脆化防止の働きもしているのです。 インヒビターを添加しない塩酸酸洗では、次のような化学反応が起きています。
- コンデンサなどの小型部品の整列のためのLCA(ローコストオートメーション)には、次のような性能が求められます。 ■コンデンサ整列用LCA技術に求められる性能タグ:
- (3)その他の酸による酸洗 鋼材(SK5)の各種酸洗浴による水素脆化率について、次の【表】に示しました。 塩酸については前回紹介しましたが、他の酸による酸洗についても同様の結果を示しています。硫酸による酸洗は塩酸同様によく行われていますが、常温浴での水素脆化率は低いのですが、脱錆能力が低いので60℃程度の温浴が使われます。この浴での水素脆化率は塩酸浴と同程度になってしまいます。りん酸浴も同様です。 この表で分かることは、フッ化水素酸やホウフッ化水素酸などフッ素系の酸の水素脆化率が低いことと、市販インヒビターを添加した塩酸浴が低いことです。また、酸洗後行うスマット除去浴(デスマット浴)での脆化率は非常に低いことが分かります。
- チップ型電子部品の代表であるコンデンサを例に、部品整列技術について解説します。電気電子機器の小型化・軽量化・薄型化のために、コンデンサも小型・極小化の製品推移で変化してきています。タグ:
- 実装技術を例に、機械設計者と生産技術の関係を解説します。 (1)実装技術とは 電子情報機器やシステムの高機能・高性能化(複合化や融合化)と小型携帯化(高密度化)を実現するキーテクノロジーは、LSIを含む機能部品の軽薄短小化技術といえますが、これらを信頼度高くコンパクトに配線接続させるインターフェーステクノロジーを「実装技術(高密度実装技術)」といいます。(【図1】)タグ:
- 水素原子は、すべての原子のなかで最も小さい原子で、その大きさは(1.06オングストローム=1.06×10-10m)であると云われています。一方、金属の格子間隔は2〜3オングストロームでありますから、水素原子は、容易に金属に侵入することができます。 例えば、鉄鋼の酸洗の工程では、通常、硫酸や塩酸など強酸の水溶液が用いられますが、これらの酸は鉄鋼の表面を溶解します。そのとき、鉄の溶解と水素イオンの発生は同時に起きますが、水素イオンは、鉄鋼表面で放電して水素原子となります。水素原子の大部分は、水素ガスとなって大気中へ放散されますが、一部の水素原子は鋼中へ侵入します。
- 機械設計者といっても対象があまりにも広くなります。微小サイズから超大型、工業、農業/水産業、食品、医療など、産業ごとの特徴もあります。しかし、どの場合においても機械設計者に求められる要求は、次のように表現できます。 (1)機械設計者に求められること 機械設計者に求められる要求事項は、競合の機械設計者の機械よりも高い満足度をお客から得ることです。タグ:
- 前処理も含めた湿式表面処理において、水素の発生は、次のようなときに起きます。 例えば酸洗工程では、次のような反応が起きます。 FeO + 2HCl → H2O + FeCl2(酸化物だけの溶解) Fe + 2HCl → 2H+ + FeCl2(鉄鋼も溶解) このように酸化物だけの溶解では水素は発生しませんが、鉄鋼も溶解しますと、水素イオンが発生します。 また、亜鉛めっき工程では次の反応により、亜鉛の還元と、水の電気分解で水素イオンが生成され、これが水素になります。
- ボールねじは大きく「研削ボールねじ」と「転造ボールねじ」の2つに分類できます。ボールねじを構成する部品は「研削ボールねじ」と「転造ボールねじ」では大きな違いはありません。したがって、ボールねじの製造方法の主な相違点は、(1)ねじ軸の造り方、(2)ボールねじの性能に応じた性能の造りこみと検査の2つといえます。以下に概要を解説します。 (1)ねじ軸 ねじ軸の製造プロセスを単純化すると、次の流れになります。
- 鉄鋼製品に電気めっきなど表面処理を施すと、水素脆性を起すので、使用中に破断する危険性があるなどとよくいわれます。それでは、水素脆性とはどんなものでしょうか。 JISにも、幾つかの定義があります。「前処理およびめっき操作の過程で、被めっき物が水素を吸蔵してもろくなる現象」(電気めっき用語)、「鋼中に吸蔵された水素によって鋼材に生じる延性または靭性が低下する現象。この現象は、酸洗、電気めっきなどの場合に生じることが多い。また、引っ張り応力が存在すると割れに至ることが多い。」(鉄鋼用語)、いずれにしても、材料が水素によって脆くなる現象をいっています。 水素脆性の発生 水素脆性は、かなり古くから知られており、特に高炭素鋼のばね材料を電気めっきする際に問題になっていました。技術的に注目されるようになったのは、宇宙航空機産業において高強度鋼が広く使われ、高強度鋼を用いた航空機のめっき部品の破損事故が多発した1950年代の末期からといわれています。 それではどのような表面処理が水素脆性を引起すのでしょうか。一般的な表面処理方法の分類を【図】に示しました。
- (5)ニッケル合金 ニッケルは高価な金属ですが、ニッケル合金は厳しい腐食環境の中で、他の金属にはないすばらしい耐食性を示す重要な金属です。 ■モネルメタル 銅を30%加えた合金で、高速の海水に耐えるので、バルブの擦り合わせ部分やポンプのシャフトなどに用いられています。また他の金属にない、ふっ酸に強いという特徴もあります。しかし硝酸やクロム酸などのように酸化性のある環境には強くありません。 ■インコネル600 クロム16%、鉄7%を加えた合金で、高温での酸化に対して強いほか、酸化性の水溶液中でかなり強い耐食性を示します。 ■インコネル625 クロムを20〜23%、モリブデン8〜10%加えた合金で、酸化性水溶液の耐食性に、インコネル600より強い耐食性を示します。この合金はオーステナイト系ステンレス鋼の弱点である孔食、すき間腐食、塩化物による応力腐食割れなどを殆ど起さない材料であります。
- ボールねじの送り精度を向上させたり剛性を増大させる手段に、ボールねじの「予圧」があります。ボールねじのねじ溝と鋼球の間にある僅かな隙間の状態が、ボールねじの特性を大きく変えます。 ミスミのFA用メカニカル標準部品カタログでは、ボールねじ選定表の「軸方向すきま」の欄に *予圧品 *0.005mm以下 *0.010mm以下 *0.030mm以下 などの表記があります。
- 標準的なボールねじは、次の部品構成で組立てられています。 この構成は、リニアガイドの構成と比較すると理解し易いでしょう。リニアガイドは単純にレール案内に沿って直進運動するユニットですが、ボールねじは、ねじ軸の回転でナットを直進運動させるユニットです。
- 物を浮かさずに移動させるときに起きる摩擦抵抗は、コロの発明で画期的に小さくなりました。砂を撒いて大きな石を引きずるよりも、コロの上に石を載せて引く方が各段に弱い力で動かすことができます。前者が直動すべり軸受で、後者が直動転がり軸受に当たります。 ボールねじは、直動転がり軸受の原理を応用し回転運動を直進運動、または、その反対に変換できる機械部品で次のような特徴を持っています。 ボールねじの特徴と利点 (1)転がり軸受同様に摩擦係数が非常に小さいです。(摩擦係数=0.002〜0.004程度)