(3)その他の酸による酸洗
鋼材(SK5)の各種酸洗浴による水素脆化率について、次の【表】に示しました。
塩酸については前回紹介しましたが、他の酸による酸洗についても同様の結果を示しています。硫酸による酸洗は塩酸同様によく行われていますが、常温浴での水素脆化率は低いのですが、脱錆能力が低いので60℃程度の温浴が使われます。この浴での水素脆化率は塩酸浴と同程度になってしまいます。りん酸浴も同様です。
この表で分かることは、フッ化水素酸やホウフッ化水素酸などフッ素系の酸の水素脆化率が低いことと、市販インヒビターを添加した塩酸浴が低いことです。また、酸洗後行うスマット除去浴(デスマット浴)での脆化率は非常に低いことが分かります。
(4)電解脱錆、電解脱脂など
酸やアルカリの溶液中で電解して、脱錆・脱脂・脱スマット・活性化などの処理が、酸洗後に行われています。これらは製品を陰極電解した場合には水の電気分解で水素が発生して水素脆化が起きます。陽極電解では、アルカリ浴では殆ど起きませんが、酸浴では非通電時の化学的溶解がありますので、水素脆化が起きます。