[2023/8/29公開]
Question
外径バイトの選定を行う際に考えるポイントは何ですか?
さまざまな外径バイトがありますが、選定する際の注意点を教えて欲しい。
Answer
外径バイトの選定で重要になるポイントは切込み角です。切込み角の特性を理解することで、より適切な工具選定とその特性を活かした使いこなしが可能になります。
外径バイトの種類と切込み角
外径バイトはJISで定義された歯形形状記号で定義づけされていますが、これらは切込み角が異なります。
切込み角とは、”ワーク外径と切れ刃からなる角”で定義づけられ、切削特性に影響を与える重要な要素です。
切込み角が切削特性に与える影響
切込み角は、おもに「切取り厚さ」と「切削力の向き」に影響を与えます。
切込み角の大小のメリット・デメリット
切込み角の大小で工具特性が大きく変化します。加工状況に応じて適切な工具選定や使い方をすることが重要です。
切込み角(切れ刃形状)による切削特性のまとめとユースケース
実際のユースケースを考えた場合の切込み角の大きな工具と小さな工具の特性を後述します。
2つの切込み角を持った新旋削工具AddMultiTurn
タンガロイから発売した新旋削工具AddMultiTurnは、切込み角が小さな刃と大きな刃を合体させた新コンセプトの工具です。
切込み角の大きな刃は前挽きで、切込み角の小さな刃は後挽きと、バイトの送り方向を変えることで、切込み角を使い分けることのできる工具です。
外径バイトの種類と切込み角
外径旋削バイトには用途によってさまざまなバイトが用意されています。
これらバイトの種類は、JISで定義された刃型形状記号で定義づけされています。
「外径・端面旋削で使用されるL刃型」や「倣い加工も対応可能なJ刃型」などがありますが、これらバイトの何が違うかというと、切込み角が異なります。
切込み角とは、ワーク外径と切れ刃からなる角で定義づけられます。
切込み角はバイトの切削特性を左右する重要なファクターになります。
切込み角が切削特性に与える影響
切取り厚さ
切取り厚さとは、送りに対する切れ刃直行方向の幅と定義されます。
切込み角が90°の場合、送り(f)と切取り厚さ(h0)は等しくなります。
切込み角が45°の場合、送り(f)に対し、切取り厚さ(h1)は0.7倍になります。
つまり切込み角が小さくなることで同じ送りを適用しても、切込み角が小さいバイトの方が切取り厚さが薄くなるため切れ刃にかかる負担が小さくなります。
その結果、切込み角が小さい工具はより高い送りの適用が可能になります。
切削力の向き
切込み角は切削力の3分力のなかでも、送り分力と背分力に影響を与えます。
送り分力とは被削材の軸方向へ押す力、背分力とは被削材の径方向へ押す力です。
切込み角が変わることで、この送り分力と背分力の配分が変わります。
切込み角が90°の場合は背分力が小さく、それに対し送り分力が大きくなります。
切込み角が45°の場合は送り分力と背分力の比がほぼ1対1の関係になります。
結論として、切込み角を小さくするにつれ、送り分力は小さく、背分力は大きくなる傾向があります。
切込み角の大小のメリット・デメリット
切込み角が大きいバイト(90°)
メリット:背分力が小さいことから長細いワーク(剛性の低い)ワークの加工に適する
デメリット:送りはそれほど上げられない
切込み角が小さいバイト(45°以下)
メリット:高送りの適応による高能率が可能
切れ刃にかかる切削負荷が小さいため工具寿命が延長する傾向がある
デメリット:背分力が大きいため、低剛性なワーク(長細いワークや片持ちのワークなど)の加工は苦手
切込みが小さくなる
切込み角(切れ刃形状)による切削特性のまとめとユースケース
前述のように切込み角は切削特性に大きな変化を与える重要なパラメータです。
切込み角の大小には、メリット・デメリットがありますので、その特性を理解した上で、加工状況に応じて工具を使いわけることが重要です。
2つの切込み角を持った新旋削工具AddMultiTurn
各種バイトにはその切込み角特有のメリット・デメリットが存在します。
タンガロイから発売中のAddMultiTurnは、切込み角が小さな刃と大きな刃を合体させた新コンセプトの工具です。
切込み角の大きな刃は前挽きで、切込み角の小さな刃は後挽きと、バイトの送り方向を変えることで、切込み角を使い分けることのできる工具です。
切込み角の特性を理解し、使用状況に応じて適切な切れ刃を使い分けることで、1本のバイトで大きな生産性の改善が可能です。