曲げ応力の予測に重要な金型部品の断面係数について解説します。
プラスチック射出成形金型の変形や曲げに関する強度計算を行う際に、「断面係数」という用語がしばしば登場します。
力学計算をより正確に理解しながら進めることができるように、「断面二次モーメント」と同様に「断面係数」とはどのようなものなのかを、あらためて理解しておきましょう。
「断面係数」とは、部品の断面形状によって特定される数値です。その点では「断面二次モーメント」と同様です。
「断面係数」は、部品の断面形状によってのみ変化します。したがいまして材質とは一切関係がありません。例えば、断面形状が同一であれば、非熱処理鋼でも焼き入れ鋼でも、木材でも「断面係数」は同一の数値となります。
「断面係数」の力学上の定義は、下記のようになります。
「梁(はり)の断面の中立軸に関する「断面二次モーメント」の値を、中立軸から外表面までの長さで除したものである。」
したがって、断面係数Zと断面二次モーメントIの関係式は下記のようになります。
断面係数は、慣習的に記号Zが多用されています。
一般に、断面係数が大きなほど、曲げに対する強さが増加します。
曲げに関して、部品の外表面に作用する最大曲げ応力σは、次式で計算が可能です。
断面形状が長方形や円形であれば、【表1】に示すように基本計算式が明らかになっています。