射出成形金型では、溶けている液体のプラスチックを金型内部へ注入させて、冷やして固めて、取り出します。
溶けているプラスチックを注入するためには、圧力を加えなければなりません。
どのぐらいの圧力が必要になるのかは、流体力学の計算によって、あらかた予測することが可能です。
実際には、溶けたプラスチックは、粘性(粘りけ)があって、しかも時間と伴に粘性が変化していきますので(冷たくなると粘りけが増して流れにくくなる)、流体力学の計算はかなり難しい式になります。
この回は、一般的な流体の状態を考える上での最も基本となる「ベルヌーイの定理」について解説します。
ベルヌーイの定理とは、流体におけるエネルギー保存の法則を表した式です。
【ベルヌーイの定理】
v2/2g+p/γ+h=H
- v
- :流体の速度(m/sec)
- g
- :重力加速度(9.8m/sec2)
- p
- :流体の圧力(kgf/m2)
- γ
- :[ガンマ]流体の比重量(kgf/m3)
- h
- :位置水頭(m)
- H
- :全水頭(m)
v2/2gの項を速度水頭、p/γの項を圧力水頭と呼んでいます。
つまり、流体では、速度によるエネルギー量と、圧力によるエネルギー量と、位置エネルギー量によって、全てのエネルギー量が決定されるということを示しています。
ベルヌーイの式は、粘性や流体の圧縮性、流体速度の変化がある場合には、そのまま適用することは困難なので、実際のプラスチック射出成形ではそのままそっくり適用はできません。しかし、原理的なことを考える上では重要な基本式となっています。