プラスチック射出成形金型の設計では、樹脂の充填、保圧による瞬間的に作用する巨大な圧力に耐えて、大変形や破壊がおきないように十分な機械強度を維持したキャビティ、コアやモールドベース、スライドコアの設計を行っておかねばなりません。
プラスチック射出成形金型に作用する力によって金型部品がどのような変形や破壊が生ずるのかを推察する学問が材料力学です。材料力学のこれまで蓄積されてきた経験式と理論を当てはめることでかなりのことを予測することができます。
特に、金型部品に作用する力に対する基準強さは、以下のステップでより深く考察を行っていきます。
1.静荷重における破壊応力
荷重が静的に加わり、かつ脆性破壊をする場合に最も適合しています。
2.降伏点または耐力
静荷重を受ける延性材料が弾性破壊の限界を示す値になります。
3.限界変形を示す応力
金型部品がある定められた変形量をこえると不都合になる場合の強度です。
4.座屈応力
座屈による破壊を考慮する場合に適しています。
5.崩壊荷重
複数の構成部品からなる部品、複数の部位からなる部品などで一部が破壊しても全体としては強度を維持できている構造の場合には、全体が崩壊する荷重を基準強さと考える考え方で対応が図れる場合もあります。
6.疲労強さ
繰り返し荷重が作用し、切欠きや応力集中箇所などがある場合には、疲労強さを応力集中部を中心として基準強さに設定する必要があります。特にキャビティ、コアなど毎ショット応力を繰り返して受ける場合には疲労強さを考慮しなければなりません。
7.クリープ強さ
高温で静荷重を受ける場合にはクリープ強さ、クリープ限度を考慮しなければなりません。 金型温度が40℃の場合と180℃の場合ではたとえ静荷重であってもクリープの考え方を無視することはできません。