応力集中は、金型部品に限らずあらゆるジャンルの機械部品において発生しうる現象です。応力集中が起きることで機械部品は一般の設計応力より低い応力で破壊に至る危険があり、想定された機械の性能発揮や安全確保ができなくなる危険があります。
機械設計技術者は、応力集中を回避する手法を身につけていなければなりません。しかし、日本には機械設計技術者の専門的な能力を国家が認証する資格制度が整備されていません。今後、機械設計技術者として社会的責任を背負う青年技術者は、自己の設計品質と技能を自身で証明するためにも、応力集中の怖さと回避策を自らが理解して、実践することを奨励いたします。
応力集中によって発生するリスクは以下のような内容があります。
リスク
- 設計応力以下の応力で破壊が発生する可能性
- 設計寿命よりも寿命が短くなる可能性
- 衝撃が作用した場合に、設計で検討した破壊荷重以下で破壊する可能性
応力集中の回避対策
1.コーナー部へRまたはCの付与
コーナー部にはできるだけ大きなR(Radius,円弧)またはC(Chamfer面取り)を設けるようにする。
Rはできるだけ大きな半径に設定する方が、応力集中係数を小さくすることができる。
2.コーナー部を形成しないデザイン
そもそも、鋭角のシャープコーナーが形成されないような徐変するデザインに心がけ、断面の面積の急激な減少等を回避する工夫を要する。
3.残留応力の除去
焼き入れ、溶接等による残留応力を除去し、気温変化や金型の温度変化による熱応力の発生を低減させる。熱処理前処理の工夫、ワイヤーカット加工手順の工夫、適切な温度下での焼き戻し、アニーリング処理などを行う。
4.マイクロクラックの除去
機械加工による部品表面に残る凹凸、表面あらさをできるだけ丁寧に磨いて取り除き、応力集中の起点になる微小欠陥を取り除く。
特に、形彫り放電加工後の表面は、残留応力が高いマイクロクラックが無数に存在しているため、丁寧に除去しなければならない。
5.外気環境の配慮
酸、アルカリ等の反応性の雰囲気が生じないようにする。