プラスチック射出成形加工では、金型のキャビティ内に射出されてある程度の強度が得られるまで冷却固化がなされた成形品を金型を開いて突き出すことによって成形品を取り出すのが一般的なプロセスです。
成形品をキャビティから離型させる、あるいはコアから突き出して取り出す際には、キャビティ、コアは一般に鋼鉄製であり、成形品は熱可塑性樹脂で室温よりは高い表面温度の状態にあります。キャビティ、コアの表面は、工作機械や磨き仕上げである表面粗さの状態で機械加工されています。そして、硬さや強度は熱可塑性樹脂成形品よりも高い状態にあるのが一般的です。このような状態を物理的に考察してみますと、成形品のキャビティ、コアからの離型は、キャビティ、コアの表面粗さによる摩擦抵抗が大きな影響を与えていることが想定されます。
キャビティ、コアの表面粗さが粗いほど、摩擦係数は大きくなる傾向にあります。そして、樹脂の硬さや自己潤滑性などによってその影響の度合いが異なります。成形品の離型を考える場合にはキャビティ、コアの表面粗さと樹脂材料の間における摩擦係数の関係を考慮することがヒントになります。以下に実験データの参考例を示します。
キャビティ・コアの表面粗さ(μm) | |||
成形材料 | 1 | 6 | 20 |
PE | 0.38 | 0.52 | 0.70 |
PS | 0.37 | 0.52 | 1.82 |
PP | 0.47 | 0.50 | 0.84 |
PC | 0.47 | 0.68 | 1.6 |
ABS | 0.35 | 0.46 | 1.33 |