インサート成形金型は、金属インサート(金属製の端子や接点などの部品のこと)をあらかじめキャビティ内に挿入(インサート)しておいて、金型を閉じて樹脂を射出成形して金属インサートを樹脂で包んだ射出成形品を作るのに用いられます。
成形品にめねじを設けたい場合に、めねじ部は、何回もおねじを付け外しを繰り返すのでねじ山が痛んでしまいます。このような場合に、めねじ部を金属インサートで作っておいて、インサート成形すれば耐久性のある部品を提供することができます。
樹脂は、一般的には電流をほとんど伝えない性質がありますので、金属部分に電流を流し、樹脂部で電流を遮断することで電気回路を形成することができます。この性質を利用した電気部品(リレー、遮断機、コネクター、スイッチなど)が大量に社会で利用されています。
インサート成形は、金属インサートだけではなく、金属帯(フープ)上にプレス加工された連続金属部品を持ちいる方法も多用されています。金属フープを連続して金型内に供給することで、効率の良い射出成形が可能になります。金属フープの端部には、送りをするためのパイロット穴が連続して設けられていて、パイロットピンにより位置決めされます。
射出成形された後は、フープはリールに巻き取られ、後工程でプレス加工で抜き落としされます。
インサート成形は、縦型射出成形機のほうが、インサートを固定しやすいので有利です。横型射出成形機でもインサート成形は可能な場合があります。
インサート成形金型では、金属インサートとキャビティ、コアが接触しますので、キャビティ、コアの材質は、できるだけ硬度を高くした焼き入れ焼き戻し鋼を採用するのが一般的です。必要に応じて、イオンプレーティングなどの硬度の高い表面コーティングもなされます。
インサート成形は、熱可塑性樹脂だけではなく。フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂にも適用されます。特に、強い電流を流す電気部品では熱硬化性樹脂の採用が多いです。
インサート成形品の品質管理では、金属表面と樹脂の密着が問題となる場合もあります。金属と高分子は、その表面のイオンの活性度合いが異なり、化学的な状態だけではなく、表面粗さなどの物理的性情も関連してくる複合的な課題です。実務のインサート成形品の開発ではこのような入り組んだ特徴についても十分に検討をしなければなりません。ほんお僅かな隙間であっても、水滴や薬剤は毛細管現象でどんどん隙間内へ浸透していきますので予想もしなかった不具合が後日露見するということもあります。
インサート成形は、樹脂と金属の複合体であるユニークな特徴を有していますので、ものづくりを得意とする日本では今後も需要ば旺盛であると考えられます。