プラスチック射出成形機でプラスチック材料を溶かして射出できる状態することを可塑化と呼んでいます。今日の射出成形機ではスクリューインライン方式(Screw In-Line)が可塑化装置の大半を占めています。
スクリューは、耐摩耗性、耐食性、高強度の金属材料で作られており、その表面には特殊なコーティングを施しているものもあります。
スクリューは、材料ペレット(粒)を加熱シリンダー内に食い込ませて前進させるためにらせん溝が機械加工されています。
らせん溝は、以下の部分で構成されています。
1.供給部
供給部は、ペレットがホッパーから重力で落下してきたものを加熱シリンダー内に導いて、その間にペレットを余熱して圧縮部で溶かすための準備をする部分です。
2.圧縮部
圧縮部は、らせん溝が徐々に浅くなるように機械加工されています。そして余熱されたペレットがさらに加熱されて溶融します。溶融しながらペレットに巻き込まれていた空気や発生したガスは、らせん後部からホッパー側へ排気されます。
3.計量部
計量部は、溶けた材料をさらに混合して均一に溶けるようにする部分です。
スクリューは、材料の特性を引き出すためにさまざまな工夫がなされます。
例えば、スクリュー直径Dとスクリュー長さLの比L/Dによって、混練される状態は変わってきます。一般的にはL/Dは18から22ぐらいですが、それよりも大きくしたり、小さくしたりするほうが適する材料もあります。
また、圧縮比は、らせん溝1ピッチあたりの圧縮される容積比で、樹脂の溶け込み具合と樹脂のせん断による自己発熱との兼ね合いを考慮して決められます。
らせん溝には混合を良好にするための溝(ダルメージ)を設ける場合もあります。
さらに、シリンダーの途中にベント(排気口)を設けて、空気やガスを強制的に外部へ排気して材料の状態を安定化させる工夫をする場合もあります。
成形材料の安定した可塑化は、成形品の品質安定に大きな影響を与えます。これから新しい成形材料を用いた射出成形品を開発するためには、金型だけではなく射出成形機の可塑化機構についても当初から検討をする必要があります。