プラスチック射出成形金型の構造では、円柱や角柱形状の部品が柱状に組み合わされて使用されるケースがあります。たとえば、サポートピラやエジェクタピン、エジェクタスリーブ、傾斜突き出しピンなどがあります。
柱には先端部に力が作用することが考えられますが、柱に力が作用する場合には、曲げ応力や圧縮応力だけでは説明しにくい現象で破壊してしまうことが知られています。このように柱の先端部に作用する力で破損する現象のことを座屈(ざくつ)と読んでいます。
座屈は、柱の長さが永くなるほど顕著に発生します。また、柱の端部が固定されているのか、自由に動ける状態にあるのかでも座屈の発生のしかたは変ってきます。
座屈がどんな状態で発生するのかは多数の実験によってある程度力学的な解明がなされています。材料力学によって座屈は予見ができるということになります。そうすると、座屈を力学計算することによって適切なサポートピラの太さ、エジェクタピンが座屈する危険性などを計算で予知することができます。
座屈の計算では以下の理論が提唱されています。
- ゴルドン-ランキンの式
- テトマイヤの式
- ジョンソンの式
- サウスウエルの式
- ω(オメガ)法
- エンゲッサーの式
- カルマンの式
- シャンレーの理論
これらの理論は、適用できる範囲や前提条件が限定されていますので、詳しく知りたい場合には材料力学の書物をひもといて学習をする必要があります。力学計算ではたくさんの破壊実験を累積して理論化していますので、実験の前提条件などをよく理解して計算式を適用することが必要です。不明確な状態で計算した結果を金型設計に反映することは危険ですので深く知りたい場合には専門書を熟読することが近道です。
現在は、エクセルなどの計算ソフトウエアで作図やグラフ化も平易にできるようになっていますが、計算式がどのようにして導き出されてきたのか、背景をきちんと知っておくことが一流の金型設計者には必要になってきます。