プラスチック射出成形金型を組立する作業は、金型を起工した場合には必ず必要になる工程です。金型の組立は、以下の作業手順で行うのが一般的です。
- (1)
- 金型部品の員数確認
- (2)
- 金型の組立手順の確認
- (3)
- 金型部品の仮組立
- (4)
- 作動調整
- (5)
- 金型の最終組立
- (6)
- 成形機での作動確認
- (7)
- 不具合箇所の調整(場合によっては分解→再組立)
金型の組立工程では、設計、機械加工、仕上げ、表面処理等の全ての結果が集合するために、それぞれの工程における設計ミス、加工ミス、部品発注漏れなどの人為的ミスや不測の不具合が全て露見する工程でもあります。迅速にそのような不具合箇所を発見し、設計変更や機械加工の手配をする必要もあります。金型の設計変更や部品の機械加工には人間の頭脳作業や機械工作時間が物理的に必要になります。的確かつ正確な判断とすみやかなフォローが旨くできるか否かで金型のトライ日程や時間が大きく左右されます。
ここで、金型が完成するまでには部品やデータは多数の人間と工程を渡り歩くものですから、情報伝達ミスや人為的勘違いが大なり小なり必ず発生します。これらを発生しにくくさせる取り組みは重要ですが、「精神論で絶対に発生しないはずだ!」という管理をする方々を見受ける場合がありますが、それは得策ではないと思います。発生した不具合を速やかに対処できるしくみや指揮命令系統を確立することがむしろ重要であり、現実的であると思います。
さて、組立工程におけるワンポイントアドバイスをしましょう。
<金型の組立手順の確認 >
○ 組立手順を熟慮してから作業に取りかかることは重要です。同時並行に作業が進められる場合には2人以上で手分けすることで時間短縮が図れます。
<仮組立 >
○ 六角穴付きボルト等で部品を締結する場合には、最初から全てのねじを締めるのではなく、最も力を受けるボルトを4本ぐらい選定し、それらをバランス良く対角線上で仮締めして、部品の全体位置を微調整してから、それらを本締めします。その後、残りのボルトを締めることで金型全体の締め込みを安定させることができます。
○ 組立の補助をする鋼材ブロックやピン類、スポンジ、毛布、ゴム板などの小道具を活用することで組立作業効率を高めることができます。
<金型の作動調整 >
○ スライドコア、エジェクタピン、リターンピン等の作動を確認するためには、金型の全体をよく見渡してから、部分的な微調整をするようにします。始めから1箇所にだけ視野を集中して作業してしまうと「木を見て森を見ず」の組立となり、うまく作動できなくなってしまうことがありますので留意が必要です。