成形品にアンダーカット部分がある場合には、スライドコアや斜め突き出し、強制突き出し等の機構を利用して、金型から成形品を取り外すことが行われています。
しかし、複雑なアンダーカット形状の場合には、メカ構造で対処することが非常に困難である場合もあります。
このような場合には、「置き駒構造」と呼ばれている古典的な手法で処理することができる場合があります。
「置き駒構造」は、アンダーカット部分をコア分割し、成形品の突き出しと一緒に分割コア(置き駒)も取り出し、その後、手動で置き駒を外します。
次の成形の際には、置き駒を金型内に再び取り付けます。
したがって、置き駒構造の場合には、半自動の成形加工になるという欠点があります。
ただし、所望のアンダーカット形状を一体成形品に設けることができますから、そのような特殊な構造がどうしても必要な場合には有効な手段になります。
要約しますと、置き駒構造がその威力を発揮できる成形品は、次のような場合です。
1. | 一般のスライドコア等の構造では、アンダーカットを処理することが困難な成形品 | |
2. | アンダーカット形状を有するが、生産数量が少ない成形品 | |
3. | 試作品用成形品 |
置き駒は手動で取り付け、取り外しをしますから、駒の挿入部分の案内用逃げ加工や面取り加工などの工夫、はめあい公差の設定がノウハウになります。
金型は全て自動生産に適応した構造でなければならないというわけではなく、アナログ的な手動工程を活用することで、所望の成形品を得ることもできるという知恵を知っておくことは、デジタル世代の設計者には重要な知見であると思います。