前回はキャビティ(固定側入れ子)の外形寸法の決め方について説明をしましたが、今回からはキャビティ側壁の厚さの強度計算の実際について解説をします。
今回取り上げる例題は「底面が分割されている長方形キャビティ」についての側壁厚さの計算例です。
例題のキャビティ形状を【図1】に示します。
【図1】における側壁の厚さhは、下式で求めることができます。
ここで、
h:キャビティ側壁の厚さ (mm)
p:キャビティ内圧力 (kgf/cm2)
l:キャビティ内側の長さ (mm)
a:キャビティ内圧力p受厚部の側壁の高さ (mm)
b:キャビティ高さ (mm)
E:縦弾性係数(ヤング率) (kgf/cm2)
σmax:許容最大たわみ (mm)
上記の各変数の数値は、()内の単位に合わせて計算を行って下さい。
pは、キャビティ内圧力ですが、200〜600kgf/cm2の範囲の値を取ります。樹脂の種類や成形条件等によりpは変動します。例としては、ABS樹脂の場合は400kgf/cm2程度、PC樹脂の場合は600kgf/cm2程度を目安とします。
lは、キャビティの彫り込み長さです。
aは、キャビティの彫り込み深さです。
bは、キャビティの高さです。
Eは、キャビティの鋼材の縦弾性係数です。
数値は、バックナンバーに掲載してあるデータを参照して下さい。
σmaxは、許容できる側壁の最大たわみです。数値としては、0.01〜0.02mm程度が適当です。
計算式に代入するデータは、成形条件や鋼材の種類等を考慮して決定します。