射出成形金型が、成形機に取り付けられた後で、可動側金型が開閉する際の運動エネルギーについて考えてみます。(【図1】参照)
物体が、ある速度で移動するときには、運動エネルギーが必要になります。運動エネルギーの量が大きくなると、金型を停止させるためには、同等以上のエネルギーに耐えられるブレーキをかけなければなりません。また、運動エネルギーが十分に低下させられた状態で型締めしないと、金型が痛んだり破壊したりする危険が考えられます。
運動エネルギーの計算式は下記のとおりです。
- E=
- (1/2)mv2
- E:運度エネルギー(kg・m2/sec2)
- m:質量(kg)
- v:速度(m/sec)
この式から言えることは、
- 運動エネルギーEは、可動側の質量mに比例する。
- 運動エネルギーEは、可動側の移動速度vの2乗に比例する。
したがって、可動側の質量が大きくなると、運動エネルギーも比例して大きくなります。型開閉速度を早くすると、速度の2乗でエネルギーが増加します。
したがって、突き当て構造や印籠構造の細いコアピンがたくさん配置されている金型や、異形状のパーティング面を有する金型では、型締め時には、スローダウン(減速)を十分にしないと、運動エネルギーによって金型が破損したりする場合がありえますから、十分に注意が必要であると言えます。