レンズや導光板、化粧品容器などの表面の鏡面性が要求される成形品用のキャビティの製作には、適切な鋼材の選定が重要になります。
金型部品の切削加工や研削加工を終えた後に加工表面は、精密ラップ仕上げ等の磨き加工が必要になります。
精密仕上げ加工をする前提としては、鋼材の素材自身の結晶粒の状態や不純物の含有状況等が、鏡面仕上げに適していることが必要になります。
代表的な鏡面仕上げ鋼種であるSUS420J2系ステンレス鋼は、不純物の清浄度を上げて鋼材組織を緻密化させる手段として、ESR法とVAR法という消耗電極式特殊溶解法で鋼材を精錬しています。
VAR法による精錬の方が、ESR法による精錬よりも一層緻密な組織が得られます。
また、さらなる緻密さを実現するために二重特殊溶解法も開発されています。
このような鋼材自身の精錬方法が適切になされていなければ、高度な鏡面仕上げは困難であると言えます。
さらに、鋼材の展延方向による組織の不均一が発生する可能性もあるため、素材の圧延方向にまで配慮をした素材選定が必要となる場合もあります。
以上の話を整理しますと、高度の鏡面仕上げを実現するためには鋼材自身の微細組織に不純物、介在物、炭化物が極小化されていて、均一な組織が得られる鋼材を選定することが必要になります。
このような特殊鋼は、鋼材メーカーでも独自のブランドで製造販売しており、特性や熱処理方法、機械加工方法などのデータを参照しながら、最適な状態で使いこなすことが必要になってきます。
ワンランク上の鏡面仕上げが必要な場合には、このような着眼点を持った金型設計と部品製作ノウハウが求められます。