前回ではスライダ・クランク機構の応用として、スライダのしゅう動ストロークの調節が可能な、多機種化の対応性を持つ機構例を紹介しました。ここでは、スライダ・クランク機構のロッド/スライダ部が簡単に交換可能な構造の「からくり治具の素」を紹介します。
【図】がロッド/スライダ部の交換が可能な機構図です。ロッド先端にクランクの回転端のヒンジピンに簡単に連結ができるU字型フックを製作したものです。
(1)応用例
スライダ部に加工ユニットを連結させ多機種化対応をする簡易自動機や治具などで、外段取りで加工ユニットを準備した後にスライダ部の交換を行い、機種切り替えロスを短くするなど。
(1)応用例
1. | 簡易スクリーン印刷機のスキージ部の駆動機構: 解説:印刷材料の交換を伴う場合やポットライフによる材料切り替えの時、スキージと一体化したスライダ部を取り外し、外段取りでスキージ位置調整されたスライダ部を取り付けることで、スピーディーに機種切り替えができる。 |
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2. | 多機種対応性を有す簡易プレス機構 |
(2)応用上の注意点
クランクの回転運動に対してU字型フックをかぶせた簡易的な結合方式のため、下記の運動には不向きです。
1. | クランクが高速で回転する場合 ロッドの自重では追従できない恐れがある |
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2. | 回転半径が大きい場合 クランク軸からU字型フックへ伝達力が伝わりにくい領域がある |
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3. | 速度不安定や振動がある場合 U字型フックが外れる恐れがある |
(3)スライダ・クランク機構の使用法
同様の機構の変位・速度・加速度線図の解説が「位置・速度・加速度と慣性力(LCA:ローコストオートメーションメカニズムの構想法-その5)」にあります。一般には、速度の変化が少ない領域か、速度の変化が線形の領域を使用範囲として選びます。