ボールねじの静音化は、ボールねじが使用される環境が過去の生産工場のみではなく、オフィスや病院、食品産業の生産ラインなど静かな環境(すなわち、騒音レベルの低い環境)で使用される場面が増えている事によります。さらに、静音化は省エネや長寿命化にも繋がる機能向上のため、必然的な性能アップのニーズです。
(1)ボールねじの静音について
転がり軸受や転がり軸受方式の直動案内のリニアガイドとボールねじの3者について、それらの構造上の違いと騒音発生状態を比較します。
(2)ボールねじの騒音源(=振動源)
- ボールねじの騒音源(=振動源)は、以下の構造上の問題に起因しています。
ボールねじの騒音源(=振動源) 騒音の種類 a)複雑な鋼球循環経路 鋼球の衝突音 b)ねじ軸の溝面の粗さや面のうねり ビビリ音 c)ねじ軸の曲がり、同軸度誤差、それらによる軸振 鋼球のすべり異常によるきしり音 d)溝の形状精度(曲がり、溝形状の不均一性 鋼球のすべり異常によるきしり音 e)ねじ軸とナットの取付誤差 鋼球のすべり異常によるきしり音 - ボールねじの騒音の大きさは、ボール径dmとねじ軸の回転数nの積の対数の値に比例するという実験式が、一般的に使用されています。したがって、ボール径の小径化や使用回転数を低く選定することが、原則的対策となります。
- この理由から、リードの大きなボールねじを選定し回転数を低くさせることで、高速駆動でも静音効果が得られます。
(3)機械システムとしての静音化対策
- ボールねじは自動機などの駆動機構の部品として組付けられるため、騒音はボールねじが組付けられた自動機全体の静音対策で決まってきます。この対策により全体の静音化の効果が得られます。
- 機械系の騒音の代表的要因として、次の項目が挙げられます。
(1)機械系全体の剛性(静剛性、動剛性)不足
(2)音がこもる様なカバーなどの構造特徴
(3)個々の振動発生源の振動制振対策の不足による振動伝達と共振