電解研磨が、研磨しようとする製品を陽極として、電気化学的にエッチングしたのに対して、化学研磨は電気を使わない研磨法です。酸またはアルカリまたはこれに塩類などを混合した液に、金属または合金を浸漬して、光沢のある平滑面を得ます。
この研磨で、大きい凹凸を除去することは困難であるので、表面の精密仕上げには適していませんが、予備研磨された面の細かい凹凸を除き、光沢を出す表面仕上げ法として適しています。
このようなことから化学研磨は、美観を目的とする表面処理、あるいは他の表面処理の前処理法として用いられ、また、生産効率や生産原価などの点で非常に有利な処理方法であります。
化学研磨には、次のような特徴があります。
(1)電解研磨のように直流電源を必要としないので、電流分布の均一性などの問題がなく、複雑な形状のものも、比較的容易に、一様に研磨できる。
(2)操作が簡単で、一度に多量の製品を処理できる。
(3)研磨後の金属表面は、酸化物などが除去された状態で、金属面が露出している。
化学研磨の機構は、あまり明瞭に解明されていませんが、その説を二つほど紹介します。一つは、平滑化光輝化を目的としたもので、一般に粘性の高い液を使用します。化学研磨液に漬けられた金属を微視的に見た場合、凸部でまず溶解が起こり、金属イオンの拡散が起きます。凸部は凹部に較べて、金属イオンの拡散が比較的自由で、凹部のほうが金属イオンの濃度が高く溶解が妨げられます。この結果、平滑化光輝化が起こります。
もう一つのものは、不動態化酸化皮膜の生成と金属の溶解を交互に起こして、微視的研磨を行わせるというもので、この場合には平滑化はあまり行われません。
電解研磨の場合は、電解液だけでは金属を溶出させることができませんので、電気エネルギーを使って溶出を促進させました。化学研磨では、化学薬品の作用だけで金属を溶出させなければなりません。したがって、化学研磨に用いられる研磨液は、強酸、強アルカリ、強酸化剤などで構成されます。
化学研磨は工業的には、アルミニウムおよびその合金、銅およびその合金、ステンレス鋼など素材に対して行われていますが、化研液としては、燐酸-硫酸系、燐酸-硝酸系、燐酸-硫酸-硝酸系など燐酸を主体としたものが使われています。
化学研磨が効果的であるためには、被研磨金属の表面が均一な組織であって、溶解速度が均一になる必要があります。このような場合研磨結果は良好ですが、不均一な相では良い結果は得られません。