電解研磨は、研磨しようとする製品を陽極として、電解浴中に浸漬し、適当な陰極との間に電流を通じて、陽極に、平滑性と光輝ある表面を与えるものです。 電解研磨装置の原理を【図1】に示します。装置は、直流電源とその制御装置、電解槽と攪拌装置(試料を液中で揺動する方式が多い)、浴温調節装置(始業前は加熱、操業中は冷却が必要)などが装備されています。
電解研磨の原理は、諸説があり、まだ正確に解明されていませんが、一つの説として、被研磨面が電解浴中で陽極になると、電解液との反応によって表面の粘性に富む酸化物の層ができます。この表面の酸化層と電解液との界面は平面になるので、酸化層の厚さは、被研磨面の凸部では薄く、凹部では厚くなります。電解液の電気抵抗は小さく、酸化層のそれはかなり大きいので、電流は凸部に集中します。このため、微小な凸部の優先的溶解が起こり、平滑化が進むというものです。
電解研磨は、【図2】に示すようにマクロ的な平滑化は難しいが、ミクロ的の平滑化、すなわち鏡面光沢を呈するような平滑表面をつくる加工法であります。
機械的研磨で表面の凹凸を砥石により除去し平滑化を行うので、マクロ的な平滑化もミクロ的な平滑化も、砥石を適当に選べば可能です。しかし、機械的研磨では表面層の結晶が破壊され、加工変質層や加工硬化層が形成されるので、鏡面光沢に仕上げた面でも極微細な研磨の条痕や微細粒子の埋め込みなど微視的な欠陥が残ることになります。しかし、電解研磨では表面の溶解により平滑、光沢化が進むためこのような加工変質層は生ぜず、欠陥の少ない化学的に清浄な表面が得られるのが特徴です。
しかし、電解研磨法が適用される金属の種類は少なく、アルミニウム、ステンレス鋼、銅やその合金などに限られています。この理由は、電解研磨が加工材料の純度や組成、組織、熱処理などの履歴により大きく影響されることと、研磨液や加工条件の選定が材料により難しいものが多いためです。 電解研磨浴には、その金属や、要求される反射率などによって選択されますが、両性金属であるアルミニウムには、酸・アルカリどちらの浴を使われます。一般には、燐酸を主としてこれに硫酸、クロム酸を添加した浴がよく用いられましたが、現在は燐酸・クロム酸フリーのものが使われています。