(3)けがき-剥離法によるマスキング
けがき-剥離法では、材料上のマスキングを手で剥離するという操作があるので、この処理を容易にするために、他のマスキング方法とは異なる特性が求められます。他のマスキングには、エッチング液に対する耐食性、塗布性、保存性、付着力などが求められますが、この方法では、
(1)可とう性(flexiblity)
(2)材料面に対する付着性
は適当な中間値をもっていることが求められます。この様子を【図1】に示しました。
この可とう性と付着力の組み合わせは重要です。マスキングが薄すぎたり付着力が十分でないと表面から剥がされてサイドエッチングが増大しますし【図1】(a)、マスキングが厚すぎたり可とう性がない場合には、マスキングの下にガスが溜まって張り出し、over-hangを生じます【図1】(b)。マスキングに適当な付着力と可とう性があれば【図1】(c)のような制御された加工断面が得られます。
けがき-剥離法に用いられるマスキング材は、一般にエラストマ(弾性物質elastomer)とプラスチックス(可塑性物質plastics)に分けられます。両者の間にははっきりとした境界はありませんが、ある条件下では同じような挙動をしますが、エラストマは、熱に強いという差があります。
マスキング材として広く用いられるものは、エッチング液が非酸化性酸やアルカリ液の場合には、ネオプレンゴム、アクリロニトニルゴム、ブチルゴムなどで、酸化性の強い液の場合には、塩化ビニル、ポリエチレン、ブチルゴムなどが使われます。
これらのマスキング材を溶剤にとかして液状にし、それを材料の全面に一様な厚さに塗布します。塗布の方法は、浸漬法、スプレー法、流し掛け法、ローラー法などが用いられます。
加工面を均一にエッチングするためには、エッチング液の濃度、液温の部分的変動を抑制するとともに、発生したガスが加工面に滞留しないような方法で、材料をエッチング液中に保持しなければなりません。そのために製品の回転、反転、動揺、液の攪拌などの物理的方法や、金属表面にガスを発生し難くする消泡剤や、表面張力を下げてガスを抜き易くする界面活性剤の添加などの、化学的方法が併用されています。