(5)電解研削の電極砥石
電解研削における電極砥石は、基本的には、絶縁性の砥粒を導電性の結合材で固めた構造をもっています。
この場合の砥粒としては、超硬合金またはHRC65以上の硬さをもつ鋼材に対しては、ダイヤモンドが一般に用いられます。その粒寸法は100~120メッシュの範囲が多いようです。また、導電性結合材としては、銅合金または銅含浸樹脂が多く用いられています。前者をメタルボンド砥石、後者をレジンボンド砥石といっています。
一般鋼材用の砥石としては、砥粒にはアランダム、結合材にはブロンズ系合金(メタルボンド砥石)と銅含浸樹脂(レジンボンド砥石)が用いられ、アランダム砥石の粒径は、メタルボンドで60~80メッシュ、レジンボンドでは100メッシュ程度が用いられています。
砥粒が研削によって磨耗し突出し量が減少したときには、ドレッシング操作が必要になりますが、メタルボンド砥石では、このドレッシングに相当するものとして逆電解の操作を行うことができます。
逆電解は、加工物を陰極、砥石を陽極に接続し、低電圧の直流を流して砥石のボンド面の金属を電解溶出させ、砥粒をメタルボンド面より所要の量だけ突出させる操作であります。銅含浸樹脂ボンドの砥石は容易にドレッシングできるので逆電解の操作を必要としません。
以上のような一般的な構造をもつ電極砥石のほかに、電解研削用砥石として金属(主として銅)を用い、その表面にダイヤモンド砥粒を1層だけ散布し、この砥粒をニッケルめっきで台金に固着したものです。これはダイヤモンド砥粒を1層だけ台金の表面に固着したものであることから、シングルレーヤダイヤモンド砥石といわれます。
この砥石は各砥粒のボンド面からの突出量が揃っているので電解研削の性能が、一般のメタルボンド砥石よりも優れており、また台金は容易に総形に成形できるので成形研削用として砥石の成形性も良くなります。
しかし、ダイヤモンド砥粒の脱落が起きたときの修正が困難であり、また価格的にもダイヤモンド1層電着したものと1~2mmの厚さのダイヤモンド層をもつ一般のメタルボンド砥石との間に大きな差がないので、特殊な場合に用いられるだけです。
成形研削用砥石としては、砥石の成形性が良いことが必要になるので、結合材として成形が容易なグラファイトを用いる電極砥石が多く使用されています。高速度鋼などの成形研削にアランダム砥粒をグラファイトでボンドした砥石がよく使用されています。この種のものとしては、A砥粒、WA、C、GC砥粒などをグラファイトに僅かのクレイを入れたもので結合した電極砥石もあります。