(2)電解加工機の構成
電解加工機の一般的な構成を、【図1】に示します。図に示すように、加工物と工具に相当する電極の距離を極めて近くし(通常0.02~0.7mm)、電解液を介して、被加工物が陽極、電極工具が陰極として直流を通電します。
通常、電圧は5~20V、電流密度は30~200A/cm2が用いられます。この電流密度は、電解研磨や電気めっきの場合よりも著しく大きいのですが、電流密度が大きいほど、加工速度が大きく、同時に加工精度がよくなり、仕上げ面粗さが向上します。
陰極と陽極の極間距離(加工間隔)を常に一定に保持するために、加工の進行に応じて陰極は被加工物の中へ送り込まれます。この送り速度は電流密度に応じて0.5~10mm/minが用いられます。その結果、加工物は陰極形状の反転した形状に加工されます。
両極間に電流が流れると、陰極面から水素ガスや陽極面からの溶解生成物などが発生します。また、通電によりジュール熱が発生し、電解液が加熱され温度が上昇します。やがて沸騰すると電流の制御は不可能になりますので、これらの影響を速やかに除去することが必要です。このために両極間の間隙にかなり速い速度で電解液を流通させることが必要で、通常、6~60m/Sの速度で、電解液循環ポンプによって強制的に循環させます。
エッチンの終わった電解液は使用済み電解液貯槽に落下し、沈降・遠心分離・ろ過・冷却により清浄化・冷却されて再び使用されます。
(3)電解液
電解加工の電解液に要求される特性として、(1)被加工物の表面を不動態化するような不溶性生成物をつくらない。(2)液中の陽イオンが電極工具に電着しない。(3)電導度が高く、粘度が低い。(4)良好な加工精度と仕上げ面が得られる。(5)腐食性と有毒性がない。(6)液の組成が安定で安価、容易に入手可能、などであります。
中性塩の水溶液は、酸やアルカリよりも電導度は低いのですが、よく用いられています。例えば、NaCLの水溶液は、鉄系合金、ニッケル-クロム系合金を中心に、殆ど大部分の金属に使用されています。この溶液は塩素イオンを含むので、陽極の不動態化を妨害し、また、陽イオンがNaイオンであるため、陰極表面に電着することもありません。