(4)電解加工における電流効率と加工速度
電解加工における加工速度は、電気分解におけるファラデーの法則を用いて理論的に求めることができます。ただし、次の条件が満たされていることが必要です。
(1) | 電解エッチングによって生成されるイオンの原子価が確定している。 |
(2) | 金属の溶出が陽極における唯一の電解反応である。 |
(3) | 金属は電解溶出のみによって除去され、崩落によらない。金属の塊で崩落しない。 |
一般的には、金属の除去速度がファラデーの法則によって計算された理論量と一致しない場合が多いのですが、その理由は上記の条件の一つ以上を満足していない場合が多いのです。
電解加工における電流効率は、次式で求めることができます。
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これは、電解液中を流れる電流のうち、どれだけの割合が所要の目的反応に有効に使われたかを表します。
実際には、実際の金属除去量が理論値よりも大きくなり、電流効率が100%を越える場合があります。その原因としては、
(1) | 理論値計算に用いた原子価よりも実際に溶出した金属イオンの原子価が小さかった。 |
(2) | 金属の陽極的崩壊が起きた。すなわち、金属が原子状の溶解でなく、数原子の塊となって脱落した。 |
などが考えられます。
またこれと反対に、金属除去量が理論値よりも小さくなり、電流効率が100%より小さくなる場合には、
(1) | 計算で用いた原子価より大きな原子価で溶出する。 |
(2) | 金属溶出以外の副反応があり、これが電流の一部を消費する。 |
などが考えられます。
副反応として一番問題になるのは、陽極におけるガス発生です。すなわち、陽極の過電圧は電流密度とともに増大しますが、この過電圧が大きくなって、陽極の電位が酸素を発生させるのに十分なほど高い値に達したときは、電流の一部は酸素ガスの発生に消費されるようになります。
このように、加工速度を高めるために陽極電流密度を高め過ぎると、金属溶出とともに酸素が発生することになり、金属エッチングの効率は低下し、加工速度は低下することになります。