(5)電解加工の応用
電解加工は材料の硬度、靭性に関係なく、複雑な形状を1工程で加工できるので、材料の硬度、靭性が高くて、一般の機械加工の適用が困難であり、加工形状が複雑な加工ほどそのメリットは大きくなります。
例えば、機械的な切削加工において、工具径が小さくなるほど工具の剛性が不足して、切込み量を小さくしなければなりませんので加工能率は著しく低くなります。このような加工に電解加工を適用することはきわめて効果的です。
これらの形態と方式に応じた加工例をみてみましょう。
1)電解孔あけ(electrolytic drilling)
孔あけ加工は、種々の断面をもった管が電極工具として用いられています。
【図1】のように管の外側はエポキシ樹脂などで絶縁し、先端にある幅をもったランドがついています。この側面絶縁は、電極側面からの浮遊電流による加工孔の余剰オーバーカットを防止するために必要です。
しかし電解液の種類によっては、この対策は不要です。スローイングパワーの小さいNaNO3液などの電解液では、側面における余剰オーバーカットを殆んどゼロにできるといわれています。製品の一例を【図2】に示します。
曲がり孔加工
電解孔あけ加工を応用することによって、加工物の中に曲がった孔またはスロットを容易に加工することができます。
原理は、【図3】に示しますように、円弧状の長い電極に円周方向の送りをかけることで、曲がった孔をあけることができます。通常の加工方法ではこれらの曲がり孔は、2つの部分に分割して加工し、それらを組立て、溶接などによって固定して作られますが、電解孔あけでは、組立てられた製品に直接加工することができます。