化学エッチングや電解エッチングは、電子工業、精密機械工業、印刷工業などのあらゆる分野で基礎的な技術として応用されてきました。なかには他の優れた加工技術の進歩によってその役割を終えたものもありますが、いまなお重要な加工技術であることに変わりはありません。幾つかの例を紹介しましょう。
(3)エッチングによる精密機械部品の製作
精密機械部品の殆どは、機械加工で作られますが、機械加工では製作不能なもの、あるいは求める精度が得られないもの、試作品などで製作数量が少ないもの、金型などに費用がかかりコスト高になるものなどの製作には、エッチングによる製法は有利です。
エッチングによる精密部品の製作材料には、厚さ0.1~1.6mmの板材が使われることが多く、材質は部品の用途に応じてSUS304、パーマロイ、珪素鋼板、純鉄、SUS316などが使われています。
エッチングによる製品として昔から生活に馴染み深いものとして、電気カミソリの外刃があります。これは50~70μm厚のSUS430(13Cr)板材を加工したものでありますが、切れ味をよくするためにいろいろな工夫がされています。
材料を片面から腐食貫通したのち、プレスで貫通端を鋭利にする方法や、Wエッチ方式という腐食貫通端の裏面に表パターンよりも10~20μm大きなパターンを焼き付けて、その狭い露出部に硬質クロムめっきを施して切れ味をよくすることなどが行われました。
しかし今日では、この方法は廃れ、電鋳法によるものが多くなってきました。すなわち、プリント基板などを利用して、35~70μm厚の銅貼りプリント基板上に外刃のネガティブパターンを焼付け、エッチングしてパターン以外の銅箔を除去します。これを、電鋳母型としてクロムやニッケルを50~70μm電鋳します。基板から剥離し、プレス加工して製品とします。
用途別には、次のような分野に使われています。
1)計測
ストレインゲージ、ガルバノメーターのミラーフレーム、電気接点・端子、メーター用ガスケットなど
2)電子工業
ブラウン管のシャドウマスク、高密度組立て回路用コネクター、各種のグリッド、セラミックコンデンサー用ジグ、磁気録音機のヘッドなど
3)光学機器
カメラのシャッタ、カメラの絞り、各種のスリットなど
4)その他
精密極小ノズル、振動板、極細フィルター、工業用ダイヤモンドのカッティングベース、シリコンウエハ研磨用キャリヤーなど。