(2)酸溶液
各種の無機酸の水溶液は、電導度が比較的高く、また陰極反応は水素の放電が主でありますので、電極工具への電着の危険性はありません。しかし、一般に酸溶液は、腐食性が強く、取扱に不便なため、特殊の場合にしか用いられません。
また、酸溶液を用いた場合、加工の進行につれて水素の消耗により、電導度が減少し、同時にpHが増大するので、金属イオンが陰極面上に電着し易くなります。溶出して生成された金属イオンは、液中にそのまま保持されます。
(3)アルカリ溶液
通常、多くの金属に対してアルカリ溶液は用いられません。それは、アルカリ溶液中では不溶解な陽極生成物が形成され、加工物の溶出を妨害するからです。
しかし、タングステンやモリブデンなどを電解溶出させるには、有効です。それは、これらを陽極酸化によって酸化物とし、それをNaOHなどによって、タングステン酸塩またはモリブデン酸塩として溶出させることができるからです。
このような理由で、アルカリ溶液は、超硬合金の電解加工液として用いられています。超硬合金は、本質的には炭化タングステンとコバルトの混合物であり、それぞれ溶出機構が異なるから、よい仕上げ面を得るためにはWCとCoをそれぞれよく溶出する、少なくとも2つ以上の成分が必要です。この2つの成分にはNaClとNaOHがよく用いられています。CoはNaClによって、Co+2Cl→CoCl2+2eの反応によって塩化コバルトとして溶出します。
WCは、先ず陽極酸化されてWO3となり、これがNaOHと反応して
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により、タングステン酸ソーダになって溶出します。
また、アルカリ溶液は取扱に注意する必要がありますが、金属に対する腐食性がないので、装置の構成材料の選択が非常に容易になります。
(4)電解加工された面の粗さ
電解加工は、電解エッチング(溶出)を利用して材料から原子を1個ずつ除去して加工するものですから、一般的な機械加工におけるような機械的な力や熱的な影響は殆どありません。従って、このような手段によって生じる加工面は、機械加工による面とは異なります。
機械的加工においては、工具と材料が線接触して削るため、カッターマークがつき、それが仕上げ面粗さとして表れますが、電解加工では、工具と材料は非接触ですから、このようなことはありません。しかし、多くの金属材料は多結晶体であり、それぞれの結晶は異なった電解溶出速度をもっていますから、それによる粗さは出現します。