[2023/11/28公開]
Question
エンドミルの母材と特徴 使い分けを教えて
エンドミルの母材はさまざまな種類があるようですが、特徴や使い分けを教えてもらえますか?
Answer
エンドミル母材の種類と特徴、主な被削材を以下に記載しますので、加工用途に合った母材を選定してください。
母材種類 | ミスミマーク | 特徴 | 主な被削材 |
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ハイス鋼 | 高速度工具鋼のことで、JIS表記でSKH2やSKH3などにあたります。鋼にタングステン・クロム・バナジウム・モリブデンなどを加えた工具鋼で切削工具に広く使用されています。超硬と比較して安価で靭性に優れていますが、耐熱性・耐摩耗性は劣ります。粉末ハイスと分けるために溶解ハイス鋼とも呼ばれることがあります。 | アルミ合金 銅 鋳鉄 炭素鋼 合金鋼 |
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コバルト ハイス鋼 |
Co(コバルト)を添加した溶解ハイス鋼 で、JIS表記でSKH55やSKH59などにあたります。一般的なハイス鋼と比べ耐磨耗性が改善されています。 | アルミ合金 銅 鋳鉄 炭素鋼 合金鋼 |
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粉末ハイス鋼 | 材料を粉末状にして圧縮焼結させたハイス鋼です。粉末ハイス鋼は粒子が細く結合度が高いため、コバルトハイスに比べて耐摩耗性が高いといえます。また靭性も改善されチッピングが減少します。しかし製作工程が増えるため、粉末ハイス鋼の方が一般的に高価になります。 | アルミ合金 銅 炭素鋼 合金鋼 ステンレス |
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超硬 | 主成分の炭化タングステンをコバルトやニッケルで結合させた材料です。製法は材料の粉体を高圧成形し焼結させます。ハイス鋼に比べ硬度が高く、耐摩耗性に優れています。エンドミルでは粒径が大きめ(WC粒径1μm以上)のもの使用することは少ないので、超硬とは超硬材質全体を指す場合があります。 | アルミ合金 銅 炭素鋼 調質鋼 ステンレス |
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超微粒子超硬 | 超硬合金を構成する粒子を微粒子化し、 硬さと靱性の性能をアップさせた材料です。アルミ加工から調質鋼加工まで幅広く用いられるエンドミルの母材です。ハイス鋼では炭素鋼加工は切削速度20~30m/minですが、超微粒子超硬では80~120m/minで加工することが可能です。 | アルミ合金 銅 炭素鋼 調質鋼 ステンレス |
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超々微粒子超硬 | 超硬合金を構成する粒子を、超微粒子よりさらに 微粒子化(WC粒径約0.5μm以下)し、硬さと靱性の性能をさらにアップさせた材料です。調質鋼や高硬度鋼の加工に優れた耐摩耗性能を発揮します。 | アルミ合金 銅 炭素鋼 調質鋼 高硬度鋼 ステンレス |
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サーメット | 主成分の炭窒化チタンをコバルトやニッケルで結合させた材料です。製法は材料の粉体を高圧成形し焼結させます。耐摩耗性に優れ、鋼との親和性が低いので50HRC以下の鋼の加工に適しています。ただし靭性が低く欠けやすいため中~軽切削に向いています。 | 炭素鋼 調質鋼 |
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セラミックス | 主成分はアルミナのものと窒化ケイ素のものがあり、どちらの製法も材料の粉体を高圧成形し焼結させます。高硬度で耐熱も高いため、焼き入れ後の鋼材の高速ミーリングが可能です。ただし靭性がなく欠けやすいため、高速の軽切削に向いています。また熱衝撃にも弱いのでエアーブローで加工します。 | 焼入れ鋼 耐熱合金 |
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CBN | 立方晶窒化硼素というダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ材料で、炭素とは反応しなく焼入れ鋼や超硬合金などの高硬度材の精密仕上げ加工に適しています。また、耐久性も高く長時間切削が可能です。 | 焼入れ鋼 超硬合金 |
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ダイヤモンド 焼結体 (PCD) |
ダイヤモンドとバインダの粉体を高圧成形し焼結した多結晶ダイヤです。硬度は最も高く耐摩耗性に優れています。鉄系の鋼とは親和性があるため使用するのは避けます。 | 非鉄金属 セラミックス 超硬合金 |