高精度でかつ高剛性が求められるボールねじには、方向変換時のガタをゼロにする目的で「予圧ボールねじ」が選定されます。ここでは、予圧の測定法と実際の測定・管理データ等で予圧管理について解説します。
(1)予圧動トルクの測定法
- 予圧動トルクとは、所定の予圧が付与されたボールねじのナットが、外部荷重を作用させずに回転するときに示す実トルクのことで、その測定法がJIS B1192-7.6に定められています(【図1】参照)。
- 実際の測定では、ねじ軸を回転させた時にナットを停止させるに要する力をロードセルで計測し、この力Fにねじ軸中心から測定点までの距離(腕の長さL)を乗じてトルクを算出します。
(2)実際の測定データと管理法
- 超精密位置決め用ボールねじや工作機械用高剛性ボールねじなどは、出荷段階で予圧動トルクが出荷検査データとしてチェックが入ります。【図2】は工作機械用の超精密高剛性ボールねじの出荷時の予圧動トルクデータです。
- 両方向の予圧動トルクが測定され、予圧トルクの規格値に対する出荷時の品質保証が成されます。【図2】のデータでは、予圧トルク=20.6〜37.2N・cmの値を示しています。
- 【図3】の予圧動トルクのグラフは【図2】のボールねじを長期間使用した結果、ボールねじ製品の摩耗等により予圧が低下した状態での予圧動トルク測定データです。測定値は9.8〜24.5N・cmの値を示しており、出荷時の初期値に比較して30〜40%程度予圧が低下しています。
- この状態を「予圧抜け」と称し、初期になかったガタが生じて、精度劣化や剛性低下、サーボ不安定などの要因に繋がってきます。