原動体の力を従動体に伝える場合に、機構設計上の配置や大きさなどの制約を解消させる機構要素として変向機構があります。これは原動体からの力や運動の方向をそのまま利用せず、向きを変える機構のことです。ここでは2回に分けて代表的な変向機構を紹介します。
(1)ベルクランクを用いた変向機構
【図1】は90度のベルクランクで同一平面にある2個のリンクの運動方向を変更させた例です。
ここでベルクランクとは、2個のリンクを同一平面内である角度で連結させた連結部品のことです。図1では原動体(2.)の上下往復運動を従動体(3.)の水平往復運動に変向した例です。
【図2】は自動車のエンジン部に採用されている変向機構(クランク)です。
=リンクとベルクランクを用いた変向機構の設計の注意点=
【図1】の場合、原動体からの力の伝達はピン(4.)によりベルクランクに伝わり、シャフト(5.)を中心に回転し、ピン(6.)を介して従動体(3.)に伝わります。したがって設計上の注意点は下記の2項目です。
a)スムーズな運動のためのピン径とピン穴、シャフト径とシャフト穴のはめあい寸法の選定
b)磨耗対策
a)の場合の3種の運動状態に対するピン径シャフト形と対応する穴の寸法関係を下表に示します。すべて「すきまばめ」です。
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なお、はめあい寸法の選び方は、改めて解説します。