以前に「良い設計について」を解説しました。ここでは、もう少し具体的に如何にして「確実な機構を構想するか」を解説します。
エンジニアの労務費が高い日本では、設計から完成までの時間が最短となる「確実な機構」が、短納期で低コストなLCA(ローコストオートメーション)といえます。
(1)機素の個数と機構
機素(エレメント)の組合せで出来上がる機構を、1.道具、2.備品、3.手動治具、4.自動機械に分類すると、それぞれの機素の数は概略下表のように区分できます。道具では6角レンチなら機素=1個、かしめ用の手動治具のレベルでは数10個の機素(部品点数)。移動用メカニズムでは、自動車=104代、飛行機=105代、打ち上げロケット=106代の機素でできあがっています。
|
(2)機素の個数と機構の性能(コスト、信頼性)
いくつかの機素が集まってサブシステムのような機構要素(例えば、ボールベアリングなど)ができ、それらのサブシステムが集まって機構ができあがります。
上記1)の例からも解るように、自動機や加工機などの機械は機素の数が多いほど難しくなり、その難しさの程度は機素の数の2乗に比例するといわれます。したがって、「確実な機構」を造るには、次の項目がポイントです。
1. | 機素数を減らす | |
2. | ユニットを利用する(ユニットとは、機素の組合せでできた標準的な機構要素) |
機素の数が少なければ、トラブルも少なくメンテナンスも単純になり、信頼性が向上します。また標準的な機構要素のユニットを利用することで、低コスト化・短納期化が得られます。
機素の数を減らし、高性能で低コスト化、高信頼性を実現している代表製品はパソコンです。電子部品をLIS化して高集積化し1個のユニットにし、また、HDDやマザーボード類も規格化されたため、個人でユニットを購入し、組立てることができるまでになりました。
LCAメカニズムの構想では、標準的な機構要素を活用して単純な機構とすることで「確実な機構設計」のレベルが向上できます。