(1)高速化対応設計の課題
・自動化機器の高速駆動化に伴う課題として、次の項目を念頭に置く必要がある。
a)高速駆動対応アクチュエータの選定と使いこなし
b)高速駆動に対応できる機構部特性
・2つの課題a)、b)は相互に関係して最適な高速化対応設計を行うことが非常に重要となる。
・2つの課題が個別に対処すると、b) の機構設計者は高精度で高剛性機構を目指して、重たい構造物となりがちで、他方a)の駆動制御設計者は高精度制御かつハイパワー駆動が可能な高額なシステム設計となりがちである。
・a)とb)の両課題を同時に検討し最適設計する考えからは、次のようなコンセプトの装置開発を進めることができる。このコンセプトから軽量高剛性でアクチュエータの運動特性と機構構造の最適化を設計に盛り込むことが可能となる。
高速化のための最適な装置コンセプト・・・・消費エネルギー最少化を実現する高速化装置
(2)高速化対応の機構設計の勘所
・高速化対応の機構設計の勘所は以下の6項目が挙げられる。
- 剛性に影響を与えない範囲で可動体構成部品のリブ構造化等の採用。
解説:強度を低下させないデザインで可動体の肉抜きなどを検討。 - 可動体の力点と可動体重心を可能な限り近づけモーメント力の影響を小さくする。
- 伝達駆動機構の構造を単純化して部品点数を減らし高剛性構造化することでサーボ剛性を高める。
解説:駆動部の部品点数(特にアクチュエータと可動体の連結部品点数)を少なくすることでサーボ剛性の低下を抑えることができ、制御時の不安定振動等を抑えられる。 - X,Y,Zの3軸駆動の場合、高速駆動を要する軸の搭載部を軽量化しその他の軸に重量物を搭載させるなどの配置最適化。
解説:Y軸を高速駆動したい場合、できるだめX軸とZ軸に搭載物を配置させる構造としてY軸可動体を軽量化させる。 - 高速可動部の駆動範囲の安全対策
解説:可動体の暴走停止ストッパ(図1)や安全カバーなど - 駆動アクチュエータとの連結配線のフレキシブルで高信頼性ある配線処理
解説:繰り返し往復運動する機構の場合、可動体のアクチュエータ連結部が破損しやすいため、最適なケーブルキャリア(図2)の選定が重要となる。このケーブルキャリアの選定が不適切な場合は、ケーブルキャリアの動きの悪さが位置決め精度を低下させたり、ケーブル断線やキャリア部材(プラスチック)の摩耗粉による装置汚染など予期せぬ問題を引き起こす。